中国におけるモバイル決済市場は、今や年間取引規模5.5兆米ドル(約619兆円)を超える巨大なインフラへと膨張しています。スマートフォンを利用したあらゆる購買が一般化する中、市場の健全化と金融秩序の安定を目指し、中国政府(中央銀行)は本格的な金融規制のメスを入れ始めました。
支払い準備金(預託準備金)比率の引き上げ
中国の中央銀行である中国人民銀行は、Alipay(アリペイ)やWeChat Pay(ウィーチャットペイ)などのサードパーティ決済プラットフォームに対し、顧客から預かった未決済資金(支払い準備金)を人民銀行の専用口座へ預託する比率を、従来の20%から50%に引き上げると通達しました。この規制強化は2018年4月から順次適用され、将来的には預託比率を100%に引き上げる計画です。
これまで決済代行業者は、顧客のプール資金(推定で総額750億米ドル規模)を商業銀行に分散して預け入れ、巨額の金利収入(利息)を得ていました。今回の預託規制により、決済業者の主たる収益源の一つが絶たれることになり、収益構造の転換を余儀なくされます。
QRコード決済における一日あたりの利用限度額規制
人民銀行はさらに、利便性を追求した結果生じていたセキュリティ上のリスクを低減するため、QRコードを使用した決済金額に対し、一日あたりの取引限度額を設ける新ルールを発表しました。
この規制は、ユーザーの本人認証(実名登録や生体情報等の確実性)のレベルに応じて、以下のような段階的な上限が設けられます。
- 静的QRコード(店舗側に掲示されたコードをユーザーがスキャンする方式など):一日の上限は一律500元(約8500円)に制限。
- 動的QRコード(ユーザーの端末画面にその都度生成されるコードを店舗が読み取る方式など):本人認証レベルに応じて、一日あたり1000元(約1.7万円)、5000元(約8.5万円)などの段階的制限を設定。
背景には、QRコードのすり替えやマルウェアを仕込んだ偽コードによる不正送金といった決済詐欺の多発があります。広東省広州市周辺では、すり替えコードによる約1450万元(約2.5億円)規模の被害事件が発生したほか、仏山市でも同様の手口で90万元(約1500万円)を詐取した容疑者が逮捕されるなど、社会問題化していました。
急成長するオンライン消費者金融への金利規制
規制当局はまた、決済サービスに紐付いて急拡大していた「少額オンライン消費者金融(小口融資)」への監視も強化します。
Alipayなどが展開する融資サービスの中には、実質的に高金利が設定されているケースがあるため、金利の上限を年利換算で最大24%に抑える制限が課されます。
さらに、今後の数年間で当局は決済大手が保有する個人の購買・信用データの収集ポリシーについても注視する構えです。アリババ系列のサービスがユーザーの買い物レポートを配信した際、同意取得プロセスが不適切だとして消費者から強い反発が起こり、公式に謝罪声明を出す事態も発生しており、プライバシーとデータガバナンスへの厳しい監視が始まっています。
情報源:Forbes
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