ライドシェア(相乗り)およびタクシー配車サービスで世界最大規模を誇る中国の「滴滴出行(ディディチューシン、以下DiDi)」が、タクシー大手の第一交通産業と提携し、2018年春にも東京都内でアプリを使った配車サービスを開始すると報じられました。
日本国内では、中国勢によるシェアサイクルやモバイル決済サービスなどの参入が相次いでおり、これまでにないスピード感に対して警戒と危機感を強める日本企業も少なくありません。中国のデジタルサービスやモビリティテックの一部は、すでに日常のインフラとして日本より格段に進んだ進化を遂げています。
スマートフォンで完結するシームレスな移動体験
中国における配車サービスの体験は極めてシンプルです。 まずスマートフォンでDiDiのアプリを立ち上げ、現在地と目的地を指定するだけで手配は完了します。位置情報は高精度にトラッキングされており、早ければ数分で指定の場所まで車が到着します。
決済は、テンセント(騰訊)が展開するSNSアプリ「WeChat(微信)」に紐付いたモバイル決済サービス「WeChat Pay(微信支払)」などを利用し、数秒で自動的に精算が完了します。現金の受け渡しは一切発生しません。
また、手配できる車種も多様です。通常のタクシーだけでなく、自家用車を用いた個人ドライバーによるライドシェア(ハイヤー・一般車両)、多人数乗車が可能なミニバン、さらにはプロのドライバーが運転する高級セダンまで、ユーザーの用途や予算に応じて自由に選択できます。日常的な通勤や移動を効率化するこれらのサービスは、タクシー運賃が高価な日本と比較しても、極めてリーズナブルで実用的な価格設定となっています。
設立5年でUber中国事業を買収するまでの成長軌道
DiDiの前身であるスタートアップ「北京小桔科技有限公司」が設立されたのは2012年7月です。同社は設立からわずか3カ月後にiOS向けのタクシー予約アプリをリリース。その年の12月には、グローバルVCであるGSR Venturesから300万米ドル(約3.4億円)のアーリーステージ資金を調達しました。
その後も、同社のファイナンスは驚異的なスピードで拡大しました。
- 2013年4月:テンセントから1500万米ドル(約17億円)を調達。
- 2014年1月:中信産業基金(CITIC PE)から6000万米ドル、テンセントから3000万米ドル、その他から1000万米ドルを含む、総額1億米ドル(約113億円)の大規模調達を完了。
こうした豊富な資金力に加え、出資元であるメガテック企業や大手金融機関からの財務・M&A戦略におけるバックアップを受け、同社は単なる「タクシー予約アプリ」から総合モビリティプラットフォームへと脱皮を遂げました。
結果として設立からわずか5年で、テンセント、アリババ、バイドゥ(百度)、さらには日本のソフトバンクグループといった巨頭から出資を受けるユニコーン企業へと成長し、ライバルであった米Uberの中国事業を事実上買収・統合するまでに至りました。
中国の市場メカニズムとグローバル自由化の本質
中国政府の管理体制に目を奪われがちですが、実態としてのデジタル経済やイノベーション分野においては、スタートアップを育てるグローバルな資金循環と自由競争の仕組みが活発に機能しています。
マクロ経済や「市場の失敗」に対する政府のコントロールや規制は強化される一方で、インターネット経済や消費者向けのフィンテック・モビリティといった市場競争が有効な領域では、今後さらに自由化と技術革新が加速するとみられます。単に政治的な枠組みだけで中国のテックエコシステムを矮小化して捉えるのではなく、そのダイナミックな市場の競争原理とスピードから、学ぶべき点は少なくありません。
情報源:マネーポスト
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