アリババ傘下のアリペイ(Alipay / 支付宝)が展開するマネー・マーケット・ファンド(MMF)「余額宝(Yu’e Bao)」を追撃すべく、テンセントの「WeChat Pay(微信支付)」が、ウォレット内の残高を元手に利息を得られる新機能「零銭通(Lingqiantong)」のベータテストを開始しました。現在は一部の限定されたユーザーのみが招待されているテスト段階ですが、スマートな資産管理ツールとして大きな注目を集めています。
アリペイ「余額宝」の圧倒的成功とテンセントの焦り
WeChat Payが今回導入した「零銭通」は、ユーザーがウォレット残高を利用して送金や「紅包(お年玉やお祝い金のデジタル送金)」の送付、クレジットカードの返済などを行えるだけでなく、残高を提携ファンドに預け入れることで日払いの金利を得られる仕組みです。
これと同様の仕組みは、アリペイが2013年から提供している「余額宝」で既に確立されていました。余額宝は少額から手軽に投資でき、銀行預金よりも高い利回りと、24時間いつでも引き出して通常の決済に使える柔軟性が受け、2017年4月には運用総額が1656億ドル(約18兆円)を超える世界最大のMMFへと急成長しました。この動きは、中国の一般ユーザーが銀行口座から資金を引き出してアリペイに移動させる流れを生み出し、中国の伝統的な銀行業界に極めて大きな脅威を与えました。
テンセントも2014年に資産運用プラットフォーム「理財通(Licaitong)」を立ち上げ、追随を図りましたが、理財通は「決済残高から直接自動で金利を生み出す」という機能を持たず、購入手続きが必要な独立した金融商品という位置づけでした。今回の「零銭通」の登場により、このアリペイとの利便性のギャップが完全に埋まることになります。
激化する2大決済インフラのシェア争い
中国のモバイル決済市場におけるテンセントの台頭は目覚ましいものがあります。数年前まで中国のモバイル決済の約8割はアリペイが独占していましたが、WeChat Payの台台頭によってアリペイのシェアは54%まで低下。WeChat Pay(およびQQウォレット)は40%に達し、二大巨頭による熾烈な覇権争いが続いています。
当時、欧米や日本ではマイナス金利政策などにより銀行の預金金利がほぼゼロに近く、個人向けの少額投資信託の即時決済連動は法規制やシステム的な観点から実現していませんでした。これに対し中国では、モバイル決済アプリそのものが高利回りの投資窓口と化し、キャッシュレス社会をさらに加速させる触媒となっていました。テンセントの「零銭通」参入は、単なる決済シェアの奪い合いにとどまらず、個人向け金融サービスにおけるユーザーの囲い込みをより強固にするための重要な戦略的一手でした。
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