
中国の国有金融大手が、急成長するモバイル決済市場で巻き返しを図るため攻勢を強めています。ターゲットは、電子商取引(EC)最大手アリババグループ傘下のアント・フィナンシャル(現アント・グループ)や、ネットサービス大手のテンセント(騰訊)といった、市場をリードする民間IT企業勢です。
圧倒的な民間主導と年間4兆ドル超の超巨大市場
中国のモバイル決済市場は、2016年9月末までの1年間で、取引高ベースで4兆1,000億ドル(約475兆円)に達し、世界最大規模となりました。映画のチケット購入から食料品、レストランでの支払いに至るまで、あらゆる生活シーンでスマートフォン決済が浸透しており、第3四半期には前年同期比106%増という驚異的な成長を記録しています。
この驚異的な市場成長を牽引してきたのは民間企業です。調査会社アナリシスによると、市場の約89%は、アント・フィナンシャルの「Alipay(アリペイ/支付宝)」と、テンセントが運営する「Tenpay(テンペイ/財付通)」(主要サービスの「WeChat Pay(微信支付)」を含む)の2大ブランドによって二分されています。
一方で、クレジットカード決済で圧倒的な独占権を持っていた国有の「中国銀聯(UnionPay)」のモバイル決済市場におけるシェアは、わずか1%にとどまっています。
中国銀聯によるQRコード標準化という対抗策
こうした現状を受け、国有メガバンクや中国銀聯は新たなシステムや業界ルールの導入によって反撃を開始しました。
中国銀聯は2016年12月、QRコード決済の業界標準規格を発表。アナリストによると、この標準化により、国内の多様な小規模モバイル決済サービスを銀聯のネットワーク下に取り込む狙いがあるとされています。銀聯が技術標準化を進めることで、取引の安全性向上と同時に、2大巨頭への依存度を下げる決済インフラの再構築を目指しています。
国有メガバンクが展開する独自アプリと「ドラゴンペイ」
銀行業界も、独自の決済アプリを立ち上げて対抗しています。中国工商銀行(ICBC)や中国農業銀行など、国内最大級の商業銀行はAlipayやWeChat Payに匹敵する機能を持つ決済アプリを開発しました。
特に、国内資産規模第2位の中国建設銀行は、顔認証技術やNFC(近距離無線通信)を搭載した決済システム「ドラゴンペイ(DragonPay/竜支付)」をローンチしました。このドラゴンペイには、党員が「共産党の党員費」を直接納付できる、国有銀行ならではの機能も備わっています。
民間2大巨頭であるアリババとテンセントが実店舗の獲得を進める中(テンセントはスターバックス中国全域2,500店への導入で合意)、国有インフラである中国銀聯とメガバンク連合がこれをどう崩していくのか、中国決済市場の覇権争いは新たな局面を迎えています。
情報源:WSJ
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