中国の代表的なメッセージングアプリ「WeChat(微信)」は、欧米や日本で親しまれているWhatsAppやLINEに似た単なるチャットツールだと思われがちですが、実際にはその枠組みを大きく超えた「スーパーアプリ」として君臨しています。テキスト送信や画像共有などの基本機能はもちろんのこと、日常生活のあらゆるシーンをカバーする多彩なエコシステムを内蔵しています。
テンセント(Tencent)が運営するWeChatは、メッセージング、ソーシャルネットワーキング(SNS)、モバイル決済、ソーシャルゲームの要素を高度に融合させ、中国を中心に約7億人のアクティブユーザーを獲得しました。WeChatがこれほどまでに強力なインフラとして人々の生活に定着した理由を、5つの特徴的な機能から紹介します。
1. 位置情報を活用したコミュニケーション「シェイク(揺一揺)」
「シェイク」は、スマートフォンを物理的に振る(シェイクする)ことで、同じタイミングで端末を振っている近隣のユーザーや世界中のユーザーとマッチングし、ランダムにチャットを開始できる機能です。この機能は特に地方から上海や北京などの大都市に出てきて孤独を感じている若者たちの間で爆発的な支持を集めました。米国メディアNPRなども、このシェイク機能を通じて出会い、実際に結婚に至った中国人カップルのエピソードを報じています。
2. ソーシャルタイムライン「モーメンツ(朋友圈)」
「モーメンツ」は、FacebookのフィードやLINEのタイムラインに相当するソーシャル機能です。写真やテキスト、記事リンクなどを投稿し、相互にフォローしている友人同士だけでコメントや「いいね!」を共有し合います。中国では主要な海外SNSが制限されている背景もあり、プライベートな人間関係を維持するための最も重要なオンラインプラットフォームとして機能しています。
3. モバイル決済インフラ「WeChat Pay(微信支付)」
欧米や日本でもメッセージアプリ内での送金機能が徐々に注目され始めていますが、WeChatは2013年の時点で極めて高度な決済エコシステムを構築していました。ユーザーは自身の銀行口座を登録するだけで、あらゆる店舗でのQRコード決済や個人間送金、お年玉をデジタルで送り合う「紅包(ホンバオ)」といったサービスをシームレスに利用できます。中国では、財布を持ち歩かないキャッシュレス生活がすでに一般的になっています。
4. ライフスタイルと融合した「ソーシャルゲーム」
運営元であるテンセントは世界最大級のゲームパブリッシャーであり、その強みをWeChatにも惜しみなく投入しています。アプリ内で配信される多くのゲームはWeChatの友人関係(ソーシャルグラフ)と直接紐付いており、スコア順位を競い合ったり、共同プレイを行ったりすることができます。3Dグラフィックスを駆使した、据え置きゲーム機並みのクオリティを持つタイトルも多数提供されています。
5. スマートな日常決済を可能にする「割り勘機能」
グループでの会食やイベントの際、精算手続きを面倒に感じる人は多いでしょう。WeChatはこれを解決するため、精算金額をグループメンバーへ均等に割り振る割り勘機能を搭載しています。会計時にアプリ上で金額と参加者を設定すれば、瞬時に計算が完了し、メンバーのスマートフォンに請求が届きます。メンバーが画面をタップするだけで、事前に登録された銀行口座やデジタルウォレットの残高から即座に送金・決済が行われます。
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