中国政府は、モバイル端末の契約(SIMカード)における実名登録義務化の取り締まりを大幅に再開しています。政府の通達によると、外国人を含むすべてのSIMカード購入者に対し、パスポート等の公的証明書の提示が厳格に求められるようになります。
日本国内においても「携帯電話不正利用防止法(2006年全面施行)」により、契約時の本人確認が厳格化されていますが、中国ではこの実名登録が通信の制限に留まらず、フィンテックやあらゆるオンライン決済エコシステムと直結している点が大きな特徴です。
1億枚の未登録SIMカードの粛清
現在、中国国内には実名登録が完了していないSIMカードが約1億枚存在すると言われています。中国の工業情報化部(MIIT)は、かねてより携帯電話番号の新規取得・継続利用に実名登録を必須としてきました。政府は実名登録義務化について「オンライン犯罪や詐欺からユーザーを守るため」と主張していますが、実質的にはインターネット検閲や社会監視の強化に繋がるという懸念も指摘されています。
MIITは、中国の3大通信キャリア(チャイナモバイル、チャイナユニコム、チャイナテレコム)に対して本規則の徹底を指示しています。
すでに2012年には、人気のマイクロブログサービス「Sina Weibo(新浪微博)」に対して、アカウントとIDカード(居民身分証)または携帯電話番号との紐付けを義務化しました。その後、テンセントの「WeChat(微信)」がWeiboを超える主流SNSになると、すべてのメッセージングサービスに対して実名登録が強制されるようになりました。
モバイル決済(Alipay / WeChat Pay)への影響
さらに今回、中国政府はモバイル決済の2大プラットフォームである「Alipay(アリペイ / 支付宝)」および「WeChat Pay(ウィーチャットペイ / 微信支付)」に対し、7月1日までに全ユーザーのアカウントにIDカード番号または中国本土の銀行口座情報を紐付けさせるよう命じました。これにより、本人確認(KYC)が完了していないアカウントは、送金や支払いが制限されることになります。
実施における課題とテクノロジー企業の負担
しかし、過去数年間の動きを振り返ると、実名登録制の完全な実施には依然として多くの困難が伴うと予測されます。
- 偽装IDによる抜け穴:他人のID番号や偽造名義を用いて規制を回避する事例が後を絶ちません。
- ITプラットフォーム企業の管理コスト:何億人ものアクティブユーザー全員のアイデンティティを確認し、データベースを構築する作業は莫大な時間と費用がかかり、企業のビジネス成長の阻害要因になる可能性が指摘されています。実際、Sina Weiboでは過去に実名登録義務化の導入後、新規ユーザーの登録数が一時的に落ち込んだと報告されています。
オンラインとオフラインの活動がすべて「スマートフォン+実名身分証」に統合されていく中国のデジタルインフラにおいて、今回の義務化はキャッシュレス経済全体に大きな構造変化をもたらすことになります。
情報源:TechCrunch
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