
米国の著名証券アナリストであるメアリー・ミーカー氏は、毎年恒例の「インターネット・トレンド報告(2016年版)」を発表しました。今回で21回目を迎えた同レポートによると、世界のインターネットユーザー数は30億人を超え、さまざまな指標から「中国が世界のインターネット市場をリードする存在になった」と結論づけています。
当時、日本のモバイル通信やモバイル決済は普及初期段階であり、LINEなどのメッセージングサービスが主流になりつつあったものの、金融や決済との垂直統合は中国ほど進んでいませんでした。本レポートは、中国がどのように決済やECを通じて巨大なデジタル経済圏を形成したかを示しています。
圧倒的なBATによる市場支配
中国のインターネットユーザー数は6億8,800万人に達し、前年比6%の成長を記録しました。増加率自体は過去数年に比べて鈍化しているものの、その影響力は巨大です。
特に注目すべきは、モバイルユーザーの利用時間です。2016年4月時点で、中国のモバイルユーザーの1日平均利用時間は200分に達しています。この利用時間のうち、BATと呼ばれる中国の3大IT巨人「テンセント(騰訊)」、「アリババ(阿里巴巴)」、「バイドゥ(百度)」のサービスが占める割合は**71%**に上りました。そのうち、テンセントの「WeChat(微信)」が35%、「QQ」が10%を占めています。
レポートでは、中国のインターネット発展を牽引する主な成長源として、広告、Eコマース、観光、金融サービス、オンデマンドサービス(配車やデリバリー等)を挙げており、いずれも米国を超える成長率を記録しています。
急成長を遂げるECと金融サービス
中国のEコマース小売市場における業績は非常に際立っています。2015年の中国小売企業の売上高ランキングにおいて、上位7社のうち1位がアリババ、2位が京東(JD.com)となり、オンラインECプラットフォームが伝統的な実店舗チェーンを圧倒しました。
金融サービスの統合も進んでおり、アリペイを運営するAnt Financialは、決済を入り口として融資、投資信託(余額宝)、保険などを網羅する金融エコシステムを構築しています。
WeChatによる会員エコシステム
WeChat決済(WeChat Pay)は、単なる決済手段に留まらず、加盟店の会員カードシステムや顧客管理(CRM)とシームレスに連携しています。これにより、店舗は決済した顧客をリピーターへ転換する施策を容易に打つことができます。

モバイル決済普及率の国際比較
中国のモバイル決済利用率は、米国や他の先進国と比較しても突出して高い割合を占めています。QRコードを用いた手軽な決済が、インフラ整備の遅れていたクレジットカードをスキップして急速に普及しました。

WeChatユーザーの購買行動
調査によると、WeChatユーザーの31%がアプリ内のWeChat決済を日常の買い物に直接利用しています。チャット、SNS、決済が一体化されたシームレスな体験が普及の鍵となっています。

EC市場の小売シェアの推移
中国のEC(電子商取引)の浸透率は小売総額に対して非常に高い割合を占めており、成長速度も米国のEC市場を凌駕しています。

リアル小売チェーンとの売上比較
中国の主要ECプレイヤーの取扱高(GMV)は、伝統的なリアル小売大手である蘇寧電器(Suning)や国美電器(Gome)、さらにはウォルマートなどの実店舗売上を大幅に上回っており、米国のAmazonの浸透スピードをも上回る勢いで成長しています。

中国のインターネット市場は、単なるユーザー数の規模だけでなく、インフラ、サービス、ビジネスモデルのあらゆる面において、今や世界で最もイノベーティブな実験場(沙盒)となっていると言えます。
情報源:KPCB(メアリー・ミーカー)インターネット・トレンド2016報告
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