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    Fintech Big Tech

    中国アントやテンセントが主導する、フィンテック革命の衝撃

    アリババから分離した「アント・フィナンシャル」がペイパルを超える規模へ急成長。決済のアリペイだけでなく、利回り投資信託「余額宝」や独自の信用スコア「芝麻信用」、さらには競合テンセントやバイドゥ(BAT)との激しいフィンテック覇権争いの実態を詳解します。

    中国アントやテンセントが主導する、フィンテック革命の衝撃

    フィンテック(Fintech)企業の代名詞といえば、オンライン決済大手の米ペイパル(PayPal)でした。ネットオークションのeBayからスピンオフし、2015年7月にナスダックへ再上場した直後、同社の時価総額は520億ドル(約5.6兆円)に達し、親会社であったeBayを上回りました。この企業価値は、当時の日本のメガバンクである三井住友フィナンシャルグループやみずほフィナンシャルグループを超えるものでした。

    しかし現在、このペイパルを規模と革新性の両面で凌駕する企業が中国に存在します。アリペイ(Alipay/支付宝)を運営する**アント・フィナンシャル(Ant Financial/現アントグループ、旧・蟻金融服務集団)**です。

    ペイパルを圧倒するアリペイの取扱規模

    アリペイは特にモバイル決済において圧倒的な強みを持ち、アクティブユーザー数は5億5,000万人と、ペイパル(1億7,900万人)の3倍以上に達しています。年間の総決済金額も約8,000億ドルと推定され、ペイパル(約3,000億ドル)をはるかに上回ります。アリババグループから分離独立したアント・フィナンシャルは、新規上場すれば当時の試算で時価総額10兆円を下らないとされ、世界で最も価値のあるユニコーン企業として注目を集めていました。

    アリペイの成功の起源は、2003年にアリババが立ち上げたC2C型ECサイト「淘宝網(Taobao)」にあります。クレジットカードの普及率が低く、買い手と売り手の間の信頼関係が脆弱だった中国市場において、アリペイは代金の中介(エスクロー)機能を果たすことで、消費者が「安心して購入できる」環境を構築。さらに、銀行口座からチャージするだけで使える手軽さが普及の決定打となりました。

    アントが展開する複合的なフィンテック生態系

    アント・フィナンシャルが単なる決済サービスの枠を超え、巨大金融プラットフォームへと進化した背景には、いくつかの画期的な派生サービスがあります。

    1. MMF型投資信託「余額宝(ユエバオ)」

    2013年に提供を開始した「余額宝」は、アリペイ口座に眠る待機資金をそのまま高利回りの証券口座(MMF)で運用できるサービスです。市中銀行よりも大幅に高い金利を提供したことでユーザーが殺到し、設立から数年で資産規模10兆円を超える世界最大級のファンドへと急成長しました。

    2. 独自の信用スコア「芝麻信用(ジーマしんよう/ゴマ信用)」

    芝麻信用は、ネット通販の購入履歴、支払い期限の遵守度、資産情報、さらには公共料金の支払い状況など、アリババの広大な経済圏データをもとにユーザーの「信用力」を350〜950点でスコアリングする個人信用評価サービスです。 このスコアが高いユーザーは、以下のようなさまざまな特典を受けられます。

    • ホテルのデポジット(保証金)免除
    • レンタカーの保証金不要での貸出
    • アリババ系EC内での後払い枠の付与

    3. 中小企業向け「アント小口融資(蟻小貸)」

    淘宝網などのECモールに出店する中小・零細事業者に対して、店舗の取引データや評価履歴をAIで自動審査し、即時融資を実行するサービスです。資金回収は事業者のアリペイ口座から自動で行われるため、不良債権化するリスクが極めて低い効率的なシステムを確立しました。

    中国ネット御三家「BAT」の激突

    中国のインターネット市場は、検索の「Baidu(百度)」、ECの「Alibaba(阿里巴巴)」、SNSの「Tencent(テンセント/騰訊)」からなる「BAT」が牽引しています。フィンテック分野においても、この3社の間で熾烈な戦いが繰り広げられてきました。

    • アリババ(Alibaba):アリペイを核とするアントの総合金融エコシステム。
    • テンセント(Tencent):月間数億人が利用するチャットアプリ「WeChat(微信)」を基盤とし、2005年に開始した「Tenpay(テンペイ/財付通)」および「WeChat Pay(微信支付)」でアリペイのシェアを急激に浸食。
    • バイドゥ(Baidu):2014年に「百度銭包(Baidu Wallet)」を開始し、後発ながら自社の検索エコシステムを活かした決済連携を模索。

    伝統的な金融インフラが不十分だったからこそ、IT企業がその隙間を埋める形で最先端のシステムを構築し得たという、中国フィンテックのダイナミズムを示す典型的な事例となっています。


    情報源: 企業家倶楽部

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