2016年の中国のメーデー(労働節)連休(4月29日〜5月1日)において、韓国のロッテ百貨店は、中国銀聯(UnionPay)およびアリペイ(Alipay/支付宝)のモバイル決済対応を強化した結果、中国人観光客による売上高が前年同期比で62%増加しました。これは、韓国国内の小売・観光業界で急速に浸透する、中国発モバイル決済エコシステムの爆発力を象徴する出来事です。
近年、スマートフォンと高速モバイル通信網の普及、そして訪韓中国人観光客の増加に伴い、中国のデジタル決済サービスが韓国市場に深く根を下ろしています。
交通インフラからコンビニまで完全網羅
中国人観光客の秦さんは、ソウル市内での家族旅行中、現地の電子マネーカードを使ってスムーズに移動しました。利用したのは、仁川国際空港で購入した「アリペイ提携交通カード」です。
これは、アリペイと韓国のスマートカード会社が共同で発行したプリペイド式の交通系ICカードで、ソウル首都圏(京畿道含む)の地下鉄やバス(9号路線など)、済州島の公共交通機関で利用できるだけでなく、韓国内の主要な加盟店での電子マネー決済にも対応しています。
また、観光客で賑わうソウル明洞(ミョンドン)の化粧品店では、上海から来た斉さんがスマートフォンのアリペイ画面を提示し、数秒で支払いを完了させました。店舗スタッフによると、「現金の持ち合わせやクレジットカードのサインが不要なアリペイやWeChat Pay(微信支付)を好む観光客が急増しており、特に若い世代はほぼスマートフォン決済を選択する」と言います。明洞の目抜き通り沿いにある店舗の3分の2以上がすでにアリペイに対応しており、韓国の3大コンビニチェーンでは導入率100%を達成しています。
空港での行列を解消するデジタル税金還付(免税手続き)
中国の決済プラットフォームは、韓国旅行における最大のストレスの一つであった「税金還付(タックスリファンド)」の手続きも劇的に効率化しました。
- アリペイの自動還付:従来のように空港の免税カウンターで長い列に並ぶ必要はありません。免税対象のレシートにアリペイ登録済みの携帯電話番号またはメールアドレスを記入し、空港内にある専用ポストに投函するだけで、還付金が自動的にユーザーのアリペイ口座へ人民元で振り込まれます。
- テンセントの「退税通(WeChat Tax Refund)」:空港のキオスク端末でパスポートをスキャンし、WeChatアプリ上で手続きを進めることで、還付金が即座に「WeChat Wallet(微信零銭)」の残高に反映されます。
加盟店の売上を押し上げる強力な販促効果
韓国の加盟店側も、決済サービスの導入による確かな経済効果を実感しています。
ロッテオンライン免税店は、2012年末にアリペイのアカウントログインに対応した中国語版サイトを開設。これにより、中国国内からの直接購入が急増し、同免税店の中国向け売上高は2012年の2,475億ウォン(当時のレートで約230億円)から、2014年には4,500億ウォン(同約419億円)へとほぼ倍増しました。さらに、アリババが主導する12月12日のショッピングイベント「ダブル12」の当日には、ロッテ免税店単体でのアリペイ決済額が1,000万元(同約1億6,700万円)を突破しました。
韓国の先進的な決済インフラと日本市場への示唆
韓国は、クレジットカードの利用比率が国内決済の約8〜9割に達する極めて高度な「キャッシュレス先進国」です。そのため、店舗側の決済端末やネットワークなどのインフラが元々整っており、中国のQRコード決済システムや中国銀聯カードとの連携を極めてスムーズに進めることができました。
一方、当時の日本は未だ現金払いが主流で、免税手続きも書類の手書きや対面での現金手渡しなどアナログな運用が主流でした。韓国が国を挙げて中国の先進的な決済・免税プラットフォームを組み込み、インバウンド売上を爆発的に伸ばした事例は、日本国内の小売・金融業界にとって、インバウンド対応とキャッシュレス化を急ぐための強い刺激となりました。
情報源: 人民網
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