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    北京の完全キャッシュレス生活、日本人記者が現地で見た実態

    2019年初頭、テレビ朝日の理事がスマートフォン1台だけで北京での取材生活に挑戦。シェアサイクル、紙メニューのないレストラン、個人商店のQRコード決済など、中国独自のインフラ「リープフロッグ(カエル跳び進化)」がもたらした完全キャッシュレス社会の実態をレポートします。

    北京の市場に並ぶQRコード決済パネル
    北京の市場に並ぶQRコード決済パネル
    北京のローカル市場の各店舗に掲げられたAlipayとWeChat PayのQRコード

    現金を持ち歩かない生活は、中国の都市部では完全に日常の光景となっています。

    2019年当時、日本のテレビ朝日の特派員(前田記者)が北京にて「現金ゼロ、スマートフォン1台のみ」で数日間の取材生活を送るという密着レポートが放送され、日本国内でも大きな反響を呼びました。

    なぜ、中国ではこれほどまでにキャッシュレス決済が津々浦々にまで浸透したのでしょうか。現地での具体的な体験から、その文化的・技術的背景を紐解きます。


    記者が体験した中国のキャッシュレスの日常

    1. シェアサイクルで「最初の1マイル」を克服

    北京に駐在する前田記者の移動は、シェアサイクルからスタートしました。

    歩道に並ぶ自転車に貼られたQRコードをスマートフォンでスキャンするだけでロックが自動で解除され、すぐに走り出すことができます。利用料金はわずか1元(当時のレートで約16円)で、その手軽さと圧倒的な安さに前田記者は思わず驚きの声を上げました。

    中国の都市交通において、シェアサイクルは駅から目的地までの「ラストワンマイル」を埋めるインフラとして定着しています。

    2. 紙メニューのない「テーブル注文(掃碼点餐)」

    続いて訪れたレストランでは、驚くべき光景が広がっていました。店内の客は誰も紙のメニューを開いておらず、各々のスマートフォン画面を見つめて注文していました。

    この店には物理的な紙のメニューがありません。各テーブルに配置されたQRコードを客自身のスマートフォンで読み取ると、WeChat(微信)などのミニアプリ上で電子メニューが立ち上がります。

    客はスマートフォンの画面上で注文から決済(WeChat PayやAlipay)までをその場で完了させます。

    • 飲食店のメリット:注文データは瞬時にキッチンのモニターへ送信され、店員が注文を取る手間やレジでの会計処理が一切発生しません。人件費の大幅な削減とオペレーション効率化が実現され、現金管理のリスク(偽札や強盗など)もゼロになります。
    • データ管理:利用客の注文履歴がシステムに蓄積され、在庫管理やリピート促進のマーケティングに即時活用されます。

    日本ではのちにコロナ禍を経てテーブル注文システムが普及し始めますが、中国ではすでに2018〜2019年の時点で、大都市から地方都市に至るまでこの「掃碼点餐(サオマーディアンツァン)」が標準仕様となっていました。

    3. 個人商店や市場の露店でも「紙1枚」で導入

    前田記者が次に向かったのは、市民の台所であるローカル市場です。

    鮮魚店、青果店、果てはリヤカーを引く露店に至るまで、どの店頭にも必ずAlipayとWeChat PayのQRコードが印刷されたプラスチック製のパネルが吊るされています。

    露店のオーナーは「スマホ1台と印刷したQRコード用紙さえあれば、すぐにでも決済の受付を開始できる。小銭を用意する必要もなく、衛生的で偽札の心配もない」と話します。

    高価な専用決済端末や通信回線の契約が必要なクレジットカードとは異なり、紙にプリントしたQRコードを置くだけで導入できる手軽さ(MPM方式)が、個人事業主のキャッシュレス化を爆発的に加速させました。


    日本と中国:インフラ深度の決定的な違い

    日本でも2018年後半から「PayPay」などの大規模還元キャンペーンにより、QRコード決済が一気に普及しました。しかし、日中の間には単なる「決済手段の移行」だけではない、インフラの深度における決定的な違いが存在します。

    中国でキャッシュレスが急速に浸透した背景には、**「リープフロッグ(カエル跳び進化)」**と呼ばれる現象があります。

    中国では従来、個人が銀行口座を維持したりクレジットカードを持ったりするハードルが非常に高く、多くの国民にとって金融サービスは身近なものではありませんでした。

    そこへスマートフォンとモバイル決済アプリが登場したことで、人々は「クレジットカード期」を飛び越え、一気にデジタル金融の時代へと移行したのです。

    また、偽札の流通が社会問題となっていた中国において、「お札を信じなくていい決済」は店舗側にとっても消費者側にとっても最大の安全策でした。インフラとしての信用度の低さが、逆に最先端のデジタルインフラへの移行を後押ししたというパラドックスが存在します。


    まとめ

    北京での体験レポートは、単に「財布がいらない便利さ」だけではなく、社会全体のオペレーションがデジタル化によってどれほどシンプルで効率的になるかを示しています。

    日本が長い年月をかけて構築した「現金への圧倒的な信頼」と「盤石なATM網」は素晴らしいインフラですが、それがゆえにキャッシュレス移行の足かせとなった側面もあります。中国の極端なまでの「スマホ完結型社会」は、国や地域の置かれた初期条件の違いがテクノロジーの普及スピードにどのように影響するかを示す、最高の実例と言えるでしょう。


    情報源:人民網

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