2018年9月に北京で開催されたインターネットセキュリティサミットにおいて、アント・グループ(旧アント・フィナンシャル)は、デジタル決済プラットフォーム「Alipay(アリペイ)」の革新的なセキュリティアップデートを発表しました。新機能「遅延決済(Delayed Payment)」の導入により、モバイル送金におけるセキュリティが大幅に強化されます。
AIシステムによる不審アカウントの検知と送金一時凍結
Alipayが誇る高度なリスク管理システムは、取引が疑わしいと判断された際、ユーザーへ即座に警告を表示し注意を促します。ユーザーがあらかじめ「遅延決済機能」を選択している場合、疑わしい送金取引は最大24時間凍結(保留)されます。
この保留期間中にユーザーが警察に通報し、送金先口座が詐欺用口座であると正式に認定された場合、凍結されていた資金はそのまま送信者の口座へ全額返金されます。
モバイル決済は通常、数秒で送金処理が完了するため、一度だまし取られたお金を被害者や警察が追跡することは極めて困難でした。リアルタイム決済は利便性を極限まで高めた一方、詐欺のリスクを増大させる側面もありました。
「遅延決済機能」は、送金者に「冷静になり間違いに気づく時間」を与えるバッファとして機能します。遅延時間は2時間または24時間の2つの選択肢から選ぶことができます。
自社開発のリアルタイムAI防壁「AlphaRisk」
Alipayは、この遅延決済機能を支えるリスク管理エンジン「AlphaRisk(アルファリスク)」の検知アルゴリズムもアップデートしました。
送金先の取引履歴や不審なパターンを検知すると、AlphaRiskは送金者に対して自動的に取引のキャンセルを促すか、強制的に遅延決済機能を適用します。この高度なAIシールドにより、Alipayの不正利用率および資金損失率は、グローバルの金融業界平均値を遥かに下回る極めて低い水準に維持されています。
遅延決済による実際の救済事例
試験運用期間中、多くのユーザーがこの機能によって詐欺被害を免れました。山東省済南市に住む趙(ちょう)さんは、オンラインゲームのアカウント不具合を解決するため、ネット上の代行業者に連絡しました。
趙さんは指示通りAlipayで代金を送金しましたが、送金完了直後に相手との連絡が遮断され、詐欺に遭ったことに気づきました。幸いにも、彼女は「24時間遅延決済」を設定していたため、即座に警察へ被害届を提出。Alipayは警察からの正式な凍結要請を受理し、送金先のアカウントが詐欺師のものと確認されたため、数日後に趙さんの口座へ全額が返金されました。
利便性と安全性のトレードオフ、そして日中の対比
リアルタイム決済が主流の現代において、意図的に決済を「遅らせる」機能は一見すると技術的な後退のように思えるかもしれません。しかし、急増する高度なフィッシング詐欺やソーシャルエンジニアリング詐欺に対抗するためには、この「わずかな時間差」が最大の防御壁となります。
日本国内における「振り込め詐欺」対策では、高齢者のATM利用制限や窓口での本人確認強化といった物理的・アナログなアプローチが主体となっています。一方、AlipayはAIによる高精度なビッグデータ解析(AlphaRisk)と、警察の公的データベースとの直接システム連携によって、デジタルかつリアルタイムに対策を実行している点が大きな違いです。
とはいえ、セキュリティはサービス提供者とユーザーの共同作業です。決済プラットフォームの技術を過信せず、個々のユーザーが送金前に相手を慎重に確認するリテラシーを持つことが、依然として最も根本的な防犯対策となります。
情報源:Kapron
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