日本の金融・決済各社が、東南アジア市場において個人向けのデジタル決済サービスを急速に拡大させている。イオングループはカンボジアで現地通貨建ての電子マネー提供に乗り出し、銀行口座を持たない人々の需要開拓を目指す。また、国際ブランドのJCBはタイでスマートフォンによる決済サービスを開始する。成長期を迎えた東南アジアのモバイル決済市場を巡り、日系各社は中国決済大手のネットワークがまだローカル決済に浸透しきっていない「空白地帯」をターゲットに、シェア獲得を急ぐ。
イオンフィナンシャルサービスは、2018年4月にもカンボジアでのサービス提供を開始する。ユーザーはスマートフォンアプリを使い、現地のイオンモールのレジなどで現金チャージを行う。チャージされた電子マネーは、買い物の支払いだけでなく個人間送金にも利用できる。現地では、口座維持手数料などのコストを敬遠して銀行口座を開設しない人々(アンバンク層)が多く、スマホによるデジタル決済の潜在ニーズは極めて強い。イオン側は加盟店手数料を低く設定することで、個人商店や小規模店舗への導入を促し、2020年までに30万〜50万人規模のユーザー獲得を目指す。
JCBは2019年を目標に、タイでのQRコード決済サービスを開始する。店頭でユーザーがスマートフォンのカメラでQRコードを読み取ると、登録されたJCBブランドのカードから引き落とされる仕組みだ。タイ国内で統一規格となっている「PromptPay(プロンプトペイ)」対応のQRコードにも準拠する。クレジットカードの利便性とスマートフォン決済の手軽さを組み合わせることで、急速に台頭するタイの中間層に向けて新規のクレジットカード発行枚数を伸ばす狙いがある。
ASEAN(東南アジア諸国連合)の総人口は約6億人を超え、日本の5倍に達する巨大市場だ。しかし、1人あたり国内総生産(GDP)は日本の約10分の1にとどまり、銀行口座やクレジットカードを所有していない層が依然として多数を占める。
例えば、国内の決済において米ドルが依然として圧倒的な存在感を持つカンボジアでは、政府が金融の自立を目指して自国通貨(リエル)の利用拡大を推進している。イオンはこの政府方針に歩調を合わせ、リエル建てのデジタル決済サービスを先行投入した。また、タイ政府もマネーロンダリング対策や現金決済の管理コスト削減、脱税防止を目的に、国家主導でデジタル決済の統一規格を強力に推し進めている。
日系各社にとって、東南アジアの成長期の中間層とデジタル決済を通じて接点を持つことは、将来的な融資事業や物販、クロスセルなど多角的なビジネス展開への強力な布石となる。クレジットカード大手のクレディセゾンも、2015年からベトナムで二輪車や家電向けの現地リテールローンを提供しており、その顧客基盤と与信ノウハウをもとに、2018年度中にも現地でのクレジットカード発行へと舵を切る構えだ。
情報源:日本経済新聞
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