
米クレジットカード大手が、巨大な中国の決済インフラ市場への本格的な自社参入に動き出した。中国人民銀行(中央銀行)がクレジットカードの決済清算業務を外資系企業に開放する新制度のガイドラインを公開したことを受け、ビザ(Visa)がライセンス(免許)の申請を行ったことを公表。マスターカード(Mastercard)も申請に向けた最終調整段階にあることを明らかにした。これまで中国国内でのカード発行などの周辺業務にとどまっていた外資系ブランドが、決済処理を川上から川下まで「一気通貫」で運営できるようになり、中国市場における外資のプレゼンスが高まる可能性が出ている。
中国のクレジットカードおよび決済市場は急激な成長を遂げており、グローバル企業にとっても成長の命運を握る極めて重要な市場だ。中国国内におけるカード(デビットカードを含む)の発行枚数は2016年時点で61億枚を超え、過去4年間で7割以上増加している。しかし、現状は政府系決済ネットワークである中国銀聯(UnionPay)が独占的な地位を築いており、決済清算規模ではすでに世界最大となっている。
Visaのアルフレッド・ケリーCEOは、4〜6月期決算のアナリスト向け説明会において「中国人民銀行に対してカード決済清算機関としてのライセンス取得申請を正式に提出した」と明言。また、Mastercardのアジェイパル・バンガCEOも「申請書作成の最終段階にあり、中国国内で提携パートナー候補となる現地銀行と協議を進めるとともに、中国人民銀行と密接に交渉を重ねている」と語った。
一方、日本発の国際カードブランドであるJCBは、「現時点で決済清算ライセンスの申請を行うかどうかは未定」とし、三菱UFJニコスは当面、中国国内市場に自社で参入する予定はないとしている。
これまでも、外資系ブランドのカード発行や加盟店の開拓自体は認められていた。しかし、中国政府は決済清算業務自体を外資に開放せず、国内銀行が共同設立した「銀聯」の決済ネットワークおよび清算システムの利用を義務付けていた。このため、外資系企業は銀聯に対して高額なシステム利用料を支払う必要があり、採算性を圧迫する主因となっていた。また、独自の決済データ処理が行えないため、トランザクションデータの管理の透明性やセキュリティに対する懸念も業界内で指摘されていた。
米国政府は2010年、「中国政府は外国の決済事業者を不当に排除し、WTO協定に違反している」としてWTO(世界貿易機関)に提訴。2014年にWTOの判断を踏まえて中国政府が市場開放を約束するに至った。さらに、米中両政府が貿易不均衡是正に向けて合意した「100日計画」にも、外資クレジットカード機関への決済業務ライセンスの速やかな付与が盛り込まれ、今年6月末に人民銀行が新制度の詳細を発表した経緯がある。
しかし、ライセンスの申請を行ったとしても、中国人民銀行による審査を経て実際に交付されるまでには、かなりの期間を要すると見られている。MastercardのバンガCEOは「次のプロセスに進むまでに12〜18ヶ月はかかる」との見通しを示した。
また、ライセンスを取得したとしても、現地での加盟店開拓ネットワークの構築や、提携する中国の商業銀行とのシステム連携など、クリアすべきハードルは極めて多い。「銀聯の巨大な牙城」を崩し、モバイル決済が急速に普及する中国市場で外資系ブランドが実質的なシェアを確保するには、地道なローカライズ戦略が求められる。
情報源:日本経済新聞
コメント
...