
中国のシェアサイクル大手、モバイク(Mobike、摩拝単車)が日本市場に進出する。7月中に一部地域でサービスを開始し、年内にも主要10都市程度へ展開エリアを拡大する。スマートフォンアプリを使って近くの自転車を探し、解錠から利用料金の決済までをすべてスマホ上で完結させるサービスだ。同社は創業からわずか1年強で500万台以上の自転車を普及させたが、中国ではこうしたスマートデバイスを活用したシェアリングエコノミーが急成長している。14億人の巨大市場で磨かれた中国発のサービスが、この分野で出遅れた日本へ本格上陸する事例が増えそうだ。
モバイクは日本法人「モバイク・ジャパン」を設立し、独自開発したGPS内蔵のスマート自転車を使ったサービスを7月中に開始する。利用者はスマホの専用アプリから最寄りの空き自転車を見つけ、車両に貼られたQRコードをスマホカメラで読み取るだけで、数秒で解錠(スマートロック解除)して乗車できる。目的地に着いたら手動で施錠すれば返却完了となり、利用料金はアプリに登録した決済手段から自動的に引き落とされる。料金の詳細は今後決定されるが、当面は30分100円以下での試験提供となる見通しだ。
すでに交通渋滞緩和や排ガス低減、市民の健康増進などの観点からシンガポールやイギリスでの導入が決定しており、今回の日本進出はモバイクにとって3カ国目のグローバル展開となる。日本では放置自転車の増加を警戒する自治体に配慮し、地域密着型でサービスを提供する方針だ。すでに複数の地方自治体と最終協議を進めており、年内に東京や関西圏などの主要都市へ順次導入を進める。
モバイクは2016年に上海でサービスを開始したばかりのスタートアップだが、すでに中国国内で500万台以上のスマート自転車を展開している。中国の都市部では、ライドシェア最大手のDiDi(滴滴出行)や民泊予約のTujia(途家)など、モバイルアプリを活用したシェアリングサービスが爆発的に普及し、市民のライフスタイルを一変させている。その急成長を支えているのが、小口決済を可能にした電子決済インフラの普及と、スタートアップへ流れ込む豊富な投資マネーである。
アリババグループが手掛ける「Alipay(支付宝)」や、テンセントの「WeChat Pay(微信支付)」などのモバイル決済は、数億人規模のアクティブユーザーを抱える「生活インフラ」として完全に定着している。中国の調査会社によると、モバイル決済市場は2016年に約200兆円規模に達したという。
モバイル決済は、スタートアップが超小口のサービスから着実に売上を回収するための重要な生命線だ。モバイクの中国での利用料は30分1元(約16円)と極めて低価格だが、1日2,000万件に達する膨大な乗車料金をすべてモバイル決済経由で確実かつ自動的に回収している。
さらに、モバイクはテンセントなどの企業グループから6億ドル(約670億円)超の大型資金調達を実施したことを公表した。2016年における中国のベンチャー投資総額は日本の20倍超となる3兆円規模に達したとされ、この圧倒的な資金力がスピード感のある新サービス開発や普及の原動力となっている。
一方で、中国においてこれほどシェアサービスが急速に広まった背景には、法規制の未整備という側面もある。モバイクや競合のofoなどが乗り捨て可能な自転車を急激に増やした結果、都市部の歩道が放置自転車で埋め尽くされ、社会問題化。これを受けて各地方政府は、事後的に駐輪規制や台数規制などの引き締め策を慌てて実施する事態となった。
モバイクは日本市場において放置自転車問題を未然に防ぐため、自治体との連携に加え、専用の駐輪スペースを確保すべくコンビニエンスストアやレストランなどと提携を進める。GPSで全車両の位置情報をリアルタイムに監視しているため、指定エリア外の違法駐輪が発生した場合はアプリを通じて利用者に警告を行うなどの仕組みも検討中だ。
近年、Alipayが国内のコンビニやドラッグストアで使える店舗を急速に増やしているほか、民泊大手のTujiaも日本市場へ本格参入している。しかし、これらは訪日中国人観光客向けのインバウンドビジネスが主体であった。今回進出するモバイクのように、日本国内の一般消費者を直接のターゲットとした中国発のコンシューマー向けネットサービスが本格上陸するケースは珍しく、今後の展開が注目される。
情報源:日経
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