
スマートフォン向け決済サービス「Alipay(支付宝)」を展開するアント フィナンシャル ジャパン(中国アント フィナンシャル サービス グループの日本法人)は2017年6月23日、都内で事業説明会を開催し、最新の日本市場における展開や加盟店の活用事例などを紹介した。AlipayはQRコードを使用したモバイル決済サービス。日本では訪日中国人観光客向けに展開されており、国内の導入店舗数は現在までに2万5,000店を突破している。
アント フィナンシャル ジャパン代表取締役社長の岡玄樹氏は、サービス概要やグローバルでの事業展開を語った。同氏はAlipayについて、単なる決済手段ではなく「決済を入口として金融サービスとライフスタイル関連サービスを統合したスーパーアプリ(Super App)」であると定義。「中国人は日本国内でAlipay決済を行った後も、スマートフォンの画面を注視している。QRコード決済を推奨する最大の理由は、決済完了後もアプリを通じてユーザーとダイレクトに対話(デジタルマーケティング)が可能だからだ」と岡氏は指摘する。「今購入した商品を無料にする」「キャッシュバックを提供する」といった特典を、確率をコントロールしながら画面上にダイナミックに提示できる点が、タッチ・アンド・ゴー型のNFC(非接触決済)などに対する大きな差別化要因だという。
Alipayは大型連休や季節イベントに合わせ、1年の約半分にわたり何らかのキャンペーンを実施しており、お花見シーズンやゴールデンウィークなど、日本特有のインバウンド需要に特化した販促も行っている。また、ユーザーに周辺店舗の情報を届けて送客を促す「ディスカバー(口碑)」と呼ばれるプラットフォーム(マーケティングツール)内の日本コンテンツページは、月間訪問者数が100万人に達している。
グローバル展開においては、現在韓国、香港、タイ、フィリピン、インドネシア、インドなどでサービスを展開。香港を除いては、現地で親しまれている電子マネーやモバイルウォレットのバックエンド(決済処理インフラや技術プラットフォーム)を提供するパートナーシップ戦略をとっている。「表向きのブランドは現地でおなじみのものだが、バックエンドの基盤は我々が共通化している。現在Alipayで中国人観光客を日本に送客しているように、将来的にはアジア各国の観光客を日本の加盟店へ届ける仕組みを構築したい」と岡氏は述べ、東京五輪が開催される2020年に向けて、送客元となる国・地域をさらに拡充していく方針を示した。
説明会後の囲み取材において、日本人向けの独自サービス展開について問われた岡氏は、Alipayという海外ブランドをそのまま日本市場に持ち込むことには心理的なハードルがあると指摘。日本のユーザーに「日本独自の慣れ親しんだサービス」として認識してもらうことが重要であり、海外諸国と同様に、日本の信頼できるサービスがフロント(顔)となり、そのバックエンドをサポートする形態が現実的であるとした。「現在、日本のどの企業とパートナーシップを組み、共に決済市場を切り拓いていくべきかを慎重に検討している」(岡氏)。
説明会の後半では、Alipayを先行導入した日本企業の担当者によるパネルディスカッションが行われた。パネリストとして、成田国際空港営業部門リテール営業部部長の神崎俊明氏、ドン・キホーテ経営サポート本部営業支援室インバウンドサポート責任者の小野沢由宇氏、ローソンインバウンド推進部シニアマネージャーの佐藤数馬氏が登壇した。
成田国際空港では、導入決定からわずか3カ月でほぼ9割の店舗にAlipayをスピード導入した。その過程でアント・フィナンシャルが主導する「グローバル空港プロジェクト」に参画し、中国のKOL(キーオピニオンリーダー)を招聘して空港内の商業施設を紹介するライブ配信を実施。瞬間最大視聴者数は11万人、累計視聴者数は数時間で126万人に達した。Alipay決済による取扱高の伸びについて、神崎氏は「以前にクレジットカード決済を導入した際の10〜20倍のスピードで成長しており、衝撃を受けている」と評価した。
ローソンでは、すでに国内47都道府県の全店舗でAlipayの利用実績があり、そのカバー範囲の広さに驚いたという。ローソンは購買データの分析を進めており、「現在、最も売れている商品はレジ横の焼き鳥(からあげクン等)」と佐藤氏は明かした。また、観光客がレジで小銭を探す手間が省けるコード決済は、レジ処理のスピードアップが求められるコンビニにおいて非常に有益だという。今後は日本と中国のローソン店舗でのクーポン相互送客や、ポイントプログラムを活かした再訪促進キャンペーンの実施などを計画している。
2015年12月に導入したドン・キホーテは、Alipayが中国国内で極めて高いライフラインとしての認知度を持っているため、店舗との親和性が非常に高かったとする。特にマーケティング効果が顕著で、タイアップキャンペーンの中には、利用客の平均購入単価を通常比で40%引き上げる成功事例もあったという。小野沢氏は「ドン・キホーテの多様な品揃えを、より深く楽しんでもらうための有効なフックになっている」と手応えを語った。深夜営業が特徴の同社店舗だが、インバウンド利用のピークは20時〜24時の時間帯に集中しているという。
情報源:ITPro
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