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    中国の「フィンテック」が日本のはるか先を行くのは当然だった

    新興国が既存の金融インフラを飛び越え一気に最新技術を導入する「リープフロッグ現象」。キャッシュレス化やフィンテック分野で日本を大きく引き離した中国のモバイル決済エコシステムを分析し、ブランチ・バンキングなどの古い決済制度に縛られる日本の課題と構造的背景を考察する。

    中国の「フィンテック」が日本のはるか先を行くのは当然だった

    新興国や開発途上国における電子決済マネーの急速な普及は、従来の常識を覆している。タクシーや街中の個人商店での日常決済がスマートフォン一つで完結する現地のリアルな報道を見るたび、日本の遅れを実感せざるを得ない。この構造的な差について、経済学者の野口悠紀雄氏が解説する。

    日本がキャッシュレス化で後れを取っている事実は、日本銀行の調査データでも裏付けられている。日銀が2017年2月に発表したレポート『BIS決済統計からみた日本のリテール・大口資金決済システムの特徴』によると、日本における対GDP比の現金流通残高比率は19.4%に達し、主要国の中でも突出して高い。キャッシュレス決済が極限まで進むスウェーデンではわずか1.7%にすぎず、日本はその11倍もの現金に依存している計算になる。

    この背景には、クレジットカードやデビットカードの普及率(決済ウエイト)が日本では欧米に比べて低いという事情がある。しかし、それだけではない。南アフリカなど、かつてクレジットカード網が十分に整備されていなかった地域でも現金の利用率は低い。これはクレジットカードの段階をスキップし、最初からモバイルを活用した電子決済が普及したためだ。

    東南アジアでも、スマートフォンをベースとした決済サービスの爆発的な拡大により、激しい金融変革が起きようとしている。東南アジアのモバイル決済規模は数年で10倍以上に拡大すると予測されており、銀行口座やクレジットカードを十分に保有していなかった新興国のユーザーが、一気に最先端のキャッシュレス社会へとなだれ込んでいる。

    日本政府も、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時に訪日観光客が日本の決済環境に不満を抱くことを懸念し、2014年の「日本再興戦略」にキャッシュレス社会の推進を盛り込んだ。しかし、実社会における変化は依然として遅い。

    なぜ新興国の電子マネー決済システムは、銀行網を中心とする日本の決済システムよりも早く普及し、優れているのか。これを示すキーワードが「リープフロッグ(蛙跳び)」現象である。

    リープフロッグとは、技術インフラの後進国や地域において、既存のインフラや古い技術の構築段階(日本の固定電話や銀行支店網など)を経るステップをすべて飛び越し、直接最先端の技術(スマートフォンやモバイル決済など)に移行し、一気に進歩する現象を指す。結果として、「後から来た者が先に行く」という逆転現象が発生する。

    この典型例が、かつての中国における電話の普及だ。中国の本格的な産業化は通信の主流が携帯電話へシフトした時期と重なったため、固定電話のインフラ網を作る段階を飛び越え、全国民にいきなり携帯電話が普及した。

    一方で、現在の日本の銀行中心の強固な間接金融システムは、第二次世界大戦期にその基礎が整備され、戦後の高度経済成長を力強く支えた歴史がある。この金融システムのコアにあるのが、全国に稠密な支店網を張り巡らせる「ブランチ・バンキング」の仕組みだ。日本はこのブランチ・バンキングの成功体験をかつてアジア諸国にも輸出しようとしたが、新興国は銀行口座や支店網の段階をスキップし、電子マネーの時代へとダイレクトに突入してしまった。

    世界銀行の統計によれば、東南アジアの一部では銀行口座の保有率が3割程度、クレジットカード保有率は数%にとどまる国も多い。だからこそ、銀行を通さない革新的なモバイル決済サービスが障壁なく一気に受け入れられたのである。

    対照的に、日本は高度に発達した過去のレガシーシステム(全国に配置されたATMや店舗網、確立されたカード決済網)があるがゆえに、抜本的なシステムの移行に時間がかかり、身動きが取れなくなっている。

    中国ではモバイル決済額が爆発的に拡大し、日本の数十倍の規模に達している。その主力を担うのが、Alibaba(アリババ)グループの「Alipay(アリペイ)」とTencent(テンセント)の「WeChat Pay(ウィーチャット・ペイ)」の2大プリペイド型モバイル決済サービスである。

    中国は現在、「一帯一路」構想を通じてアジアからヨーロッパに至る広大なエリアでインフラ投資を通じた経済的覇権を強めているが、それと並行して、これら民間テック企業が金融決済インフラの面でも世界的な主導権を握りつつある。

    「中国経済は急成長しているが、その本質は先進国のコピーであり、巨大な国有企業や政府の関与が大きい」と捉える見方は未だに多い。しかし一方で、政府の事後規制アプローチの隙間で、民間企業主導の極めて自由で破壊的なフィンテック革新が瞬く間に社会実装されているのも事実である。日本はこのダイナミズムを客観的に直視すべきだろう。

    情報源:現代ビジネス(野口悠紀雄氏)

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