アーンスト・アンド・ヤング(EY)が発表した当時(2016年末頃)の最新レポートによると、「中国のFinTech(フィンテック)市場は、実質的に世界最速のペースで成長を遂げている」という。
中国の巨大テック企業による相次ぐイノベーションと、国内市場における強力なキャッシュレス需要に後押しされ、過去1年間における中国のFinTechセクターへの投資総額は、世界最高額となる88億ドル(当時のレートで約9,700億円)を記録した。これは、従来の金融ハブであるロンドン、シリコンバレー、ニューヨークを凌駕し、世界トップクラスのFinTech大国へと急速な進化を遂げていることを裏付けている。
キャッシュレスをスムーズに受け入れる消費者基盤
EYがシンガポールDBS銀行と共同で作成した本レポートでは、中国FinTechが劇的な成長を遂げた要因を以下のように分析している。
- 世界最大規模のEC市場の存在:タオバオ(淘宝)や天猫(Tmall)などのオンラインショッピングが高度に普及しており、デジタル決済に対する消費者の心理的ハードルが最初から極めて低かった。
- 個人情報共有に対する柔軟な姿勢:中国の消費者は、サービス利便性の向上と引き換えにデータ(個人情報)を共有することに対して、比較的寛容な傾向にある。
- 既存の銀行システムへの不満:従来の国有銀行口座の利便性やサービス品質、また中小企業向け融資の不足に対して多くのユーザーが不満を抱いており、これが新興の民間デジタル金融(アリペイ等)へ顧客が流れる契機となった。
また、急速に増加する中間層の資産運用ニーズを満たすため、保険テクノロジー(InsurTech)やウェルステック(ロボアドバイザーなど)分野にとっても最適な成長環境が整っている。
「1980年代生まれ」の購買力と銀行離れ
中国におけるFinTechサービスの主要顧客層は、「80后(1980年代生まれ)」と呼ばれるミレニアル世代である。この世代の購買力は当時の市場全体の45%に達しており、大手銀行が培ってきた歴史やブランド価値よりも、スマートフォン1台で完結する利便性やスマートなUXを重視する。その結果、従来の金融機関からデジタル決済アプリへのシフトが顕著に見られる。
現在、中国国内で最も普及しているフィンテックサービスは「決済・送金」であり、全サービスシェアの40%を占める。他のアジア諸国と比較しても、その普及率はインドの2倍、シンガポールの10倍、マレーシアの40倍という驚異的なデジタルシフト率を記録している。
オンライン決済(モバイル決済を含む)の利用ユーザー数は前年比で急激に拡大し、7億7,400万人(前年同期より約2億5,300万人増加)に達した。市場を独占しているのは依然として「アリペイ(Alipay / 支付宝)」であり、大都市圏ではすでに現金やクレジットカードを上回る主要な決済手段として日常的に使われている。当時のアンケート調査(回答者1,000人規模)でも、実に9割近くのユーザーが「最も頻繁に利用する決済手段」としてアリペイを選択している。
EYアジア太平洋FinTech部門の責任者ジェームズ・ロイド氏は、「中国の急速な都市化と、無限の成長ポテンシャルを秘めた広大な地方市場の存在こそが、中国のFinTech企業を世界水準へと引き上げる強力なエンジンとなっている」と確信を示している。
情報源:FinTech online
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