中国における銀行カード(デビットカード・クレジットカード)決済ネットワーク市場の開放が、ついに実質的な一歩を踏み出しました。中国人民銀行(中央銀行)が「銀行カード決済機関管理規定」を発表したことにより、国内外の決済ネットワーク事業者が中国国内決済市場に参入可能となり、中国銀聯(UnionPay)による12年間の「一強独占状態」に終止符が打たれることになりました。
日本のクレジットカード市場では、JCBやVisa、Mastercardなどのブランドや、多様なイシュアー・アクワイアラが競合する自由市場が構築されています。これに対し、中国国内ではあらゆる決済取引が必ず国策の「中国銀聯」を経由しなければならない規制となっていましたが、今回の開放により中国も国際基準に沿った競争市場へと舵を切ることになります。
銀行カード決済ライセンスの条件公開
今回の新規定では、外資系の銀行カード決済機関が法律に基づいて中国国内に決済清算機関を設立することを正式に認めています。また、外資系企業が国内決済事業者の合併・買収(M&A)を通じて市場に参入することも可能となりました。
これにより、条件を満たす国内外の事業者はどこでも決済ライセンスを申請できるようになり、中国の人民元建てクレジットカードが銀聯ブランド以外からも発行されるようになります。
中国銀聯の時文朝総裁も、「VisaやMastercardが中国国内に独自の決済ネットワークを構築するようになれば、銀聯の売上高減少は避けられない」と懸念を示しています。2015年の銀聯カードの銀行間取引総額は53兆9,000億元(当時のレートで約860兆円、前年比31.2%増)に達しており、この巨大市場への参入チャンスを狙っていた外資系ブランドや国内のメガフィンテック企業にとっては長年の念願でした。
ダブルネームカードの終焉と競争のメリット
VisaやMastercardは20年以上前に中国市場に参入していたものの、規制により独自ネットワークを構築できず、「ダブルネームカード」(銀聯とVisa/Mastercardが1枚になったカード)の共同発行という迂回手段を取るしかありませんでした。
このダブルネームカードは、国内での決済時は銀聯ルート、海外での外貨決済時はVisa/Mastercardルートを利用する仕組みでしたが、市場開放に伴って「銀聯Visa」といったダブルネームカードは姿を消し、それぞれの単独ブランドカードへの移行が進むとみられます。
中国人民大学財政金融学院の趙錫軍副院長は、「決済市場の競争によって、手数料の低減やサービスの多様化が進み、企業と消費者は多くの恩恵を受けることができる。セキュリティ、利便性、優待内容を比較して最適な決済機関を選べる時代になる」と述べています。
実質的な移行への課題
これまで国内唯一の銀行カード決済インフラであった銀聯は、公共料金の支払い、ATM引き出し、店舗のPOS決済まで生活の隅々にまで浸透しています。今後、VisaやMastercardが参入しても、すぐさま形勢が逆転するわけではありません。
新規参入事業者には、以下のような厳しい課題があります。
- 金融基準とセキュリティのクリア:人民銀行の厳しい安全基準とデータローカライズ要件への適合。
- 店舗側POSレジ端末の改修コスト:中国国内にある数百万台のPOSレジ端末は銀聯の通信規格(磁気・IC・NFC)に最適化されているため、VisaやMastercardのEMV規格に準拠させるための大規模なバージョンアップとハードウェア投資が必要であり、これには多大な時間と資金がかかります。
また、Alipay(アリペイ / 支付宝)などのIT企業自身が決済ネットワーク(清算ライセンス)を取得して独自の決済カードを発行する可能性もあり、中国の決済市場は本格的な群雄割拠の時代を迎えることになります。
情報源:人民網
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