訪日外国人観光客(インバウンド)が、専用端末に指をかざすだけでホテルのチェックインや免税店での決済を行える新しい生体認証システムが開発されました。ベンチャー企業の株式会社Liquid(リキッド、東京)とKDDIの2社が組み、国の研究開発機関NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の資金支援を受けて、東京・池袋地区で2016年6月から実証実験を開始しました。
煩わしいパスポートの提示手続きをバイオメトリクス(生体認証)技術で代替し、スマートな日本流の「デジタルおもてなし」を通じて、さらなる観光振興を目指します。
サンシャインシティプリンスホテルで実証
実証実験は池袋の「サンシャインシティプリンスホテル」に専用端末を設置し、半年間にわたり実施されます。
宿泊する外国人客は、初回時に自身の指紋とパスポートのICチップ情報を端末に読み取らせて登録します。2回目以降のチェックインからは、指を端末にかざす「指紋認証」だけで本人確認が完了し、パスポートの原本提示が免除される仕組みです。
行政の「グレーゾーン解消制度」を適用
日本の旅館業法では、外国人が宿泊する際のパスポート提示が厳格に義務付けられています。
Liquidらはこの法的ハードルをクリアするため、産業競争力強化法に基づく「グレーゾーン解消制度」を活用しました。経済産業省と厚生労働省が協議した結果、この指紋認証システムを用いて本人確認とパスポート情報を照合する仕組みについて、「旅館業法におけるパスポートの提示・コピーと同等である」との確認を得ることで、適法に実証実験をスタートさせました。
「指一本」での手ぶら決済と免税処理の未来
このシステムは、チェックイン手続きにとどまらず、クレジットカード情報を紐付けることで、小売店などでの「指紋だけでの決済(手ぶらショッピング)」も可能にします。
また、免税店での買い物時に必要なパスポート提示と書類作成の手続きも省略できるよう、NEDOや参画企業はさらなる実証実験の適用拡大を検討していました。家電量販店やレンタカー、周辺の店舗がこの共通インフラで繋がることで、「街全体で手ぶら観光の利便性を高める」ことを目指しています。
[!NOTE] 生体認証ベンチャー「Liquid」のその後の発展 2016年当時は実店舗やホテルのレジカウンターに「専用の指紋読み取りデバイス」を物理的に設置するアプローチが模索されていました。しかし、その後のスマートフォンの普及やコロナ禍に伴う非対面取引の急増により、生体認証の主戦場はスマホのインカメラを利用した顔認証へとシフトしました。 開発元のLiquidはその後、日本のオンライン本人確認(eKYC)市場をリードする企業へと成長。現在では、銀行口座の開設や携帯電話の契約時に広く使われるスマホ顔認証システム「LIQUID eKYC」を提供しており、2016年当時の池袋での取り組みはその基盤技術と法解釈の開拓における貴重な礎となりました。
情報源: 産経ニュース
コメント
...