フィンテック(Fintech)は、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を組み合わせた造語です。金融とITが融合した革新的なソリューションを広義に捉えるならば、モバイルプラットフォームを駆使して巨大な決済インフラを築いた中国のアリペイ(Alipay/支付宝)やWeChat Pay(微信支付)はその代表例であり、中国はすでに世界最先端の「フィンテック先進国」へと変貌を遂げていました。
日常生活のインフラと化した決済アプリ
当初はオンラインショッピングのエスクロー(第三者決済)決済手段として誕生したアリペイですが、現在はテンセントが提供するWeChat(微信)とともに、中国人の日常生活に完全に統合された社会インフラとなっています。
アリペイやWeChat Payは、ネット通販の決済だけにとどまらず、以下のような多様な機能へ瞬く間にサービスを拡張していきました。
- チケット予約:航空券、高速鉄道、映画のチケット購入
- 金融サービス:MMF(マネー・マーケット・ファンド)などの資産運用商品の購入(「余額宝」など)
- 生活インフラ:電気・水・ガスなどの公共料金支払い
- 移動インフラ:GPSと連動した配車サービス(現在の「滴滴出行(DiDi)」など)
特に配車サービスでは、アプリ上で周辺のタクシーをリアルタイムで確認・手配し、目的地を事前に伝えることでトラブルを防止し、運賃決済までアプリ内で完結する仕組みが定着しました。さらに、一般的なタクシーよりグレードの高い自家用車を利用できる「専車(ハイヤー・ライドシェア)」サービスも取り込まれ、都市部の移動革命をもたらしました。
QRコード決済の柔軟性と低コスト
アリペイやWeChat Payがこれほど急激に普及した背景には、スマートフォンのハードウェア(専用のNFCチップなど)に依存せず、**「アプリ画面のQRコード(2次元コード)を読み取るだけ」**というシンプルな仕組みを採用した点にあります。
これにより、店舗側は高価な決済専用端末を導入する必要がなく、QRコードを印刷した紙を掲げるだけで決済を受け付けられるようになりました。また、ユーザー側も安価なエントリークラスのスマートフォンで利用できるため、デジタルデバイドを招くことなく、都市部から農村部に至るまで一気にキャッシュレス化が浸透したのです。
Apple Payの参入と三つ巴の戦い
中国のモバイル決済市場でアリペイが圧倒的なシェアを維持する中、テンセントのWeChat Payが猛追。さらに、2016年2月には米国、英国、カナダ、オーストラリアに続き、世界で5番目の市場としてApple Payが中国に上陸しました。
Apple Payは、iPhoneに内蔵されたNFCチップを利用して非接触決済を行うシステムです。中国で展開するにあたり、Appleは世界で50億枚以上のカードを発行しているクレジットカード決済の国家ブランド「中国銀聯(UnionPay)」と提携しました。これにより、QRコード主導のアリペイ・WeChat Payの牙城に対し、非接触NFC方式のApple Pay・銀聯連合が挑むという新たな競争構図が生まれました。
日本の決済市場との対比とインバウンド対応
当時の日本は、独自の非接触ICカード規格「FeliCa」をベースにした交通系ICカード(Suica等)や電子マネー(iD、QUICPay等)が主流であり、国際標準のNFC(Type-A/B)やQRコード決済の導入は遅れていました。
しかし、急増する訪日中国人観光客に対応するため、日本の百貨店やコンビニ、免税店は競ってアリペイや銀聯カード、そしてWeChat Payの決済端末を導入し始めました。このインバウンド需要への対応が、日本の小売店におけるマルチ決済端末の普及を促し、後の日本国内におけるQRコード決済サービス(PayPay等)の立ち上げやキャッシュレス化の進展を大きく後押しすることになったのです。
情報源: 産経新聞
コメント
...