中国人民銀行(中央銀行)は、人民元建てで決済可能な「仮想クレジットカード」を発行するスキームを巡り、米クレジットカード大手のマスターカード(MasterCard)と中国のサードパーティ決済事業者であるEZLink(捷銀電子支付)の提携業務を強制的に中断させた。これに伴い、EZLinkは自社Webサイトからマスターカードとの業務協力に関する記述を速やかに削除した。
この提携サービスは、ユーザーがEZLinkのグローバル決済プラットフォーム「GlobalCash(万事順)」で実名認証を完了し、アカウントに資金をチャージすると、世界中で使える「バーチャル・マスターカード」が即時発行されるというものだ。このカードは、16桁のカード番号、有効期限、CVC2セキュリティコードを備えており、通常のオンライン決済用マスターカードとして機能し、中国国内および海外でのオンラインショッピングに利用可能だった。マスターカードの広報担当者は「これは与信機能を持つ仮想クレジットカードではなく、事前チャージ式のプリペイドカードであり、チャージされた残高の範囲内でのみ利用できるものだ」と釈明したものの、人民銀行による行政指導の具体的な理由についてはコメントを避けた。
中国市場においては、外資系の決済カードブランドが単独で国内決済(人民元クリアリング)を行うことが法的に認められておらず、中国国内のクリアリング業務は中国銀聯(UnionPay)が独占している。そのため、マスターカードなどの外資ブランドは、中国国内の銀行との提携、あるいはサードパーティ決済事業者を通じた独自の迂回ルートによる市場開拓を模索していた。今回の「プリペイド式のバーチャルカード」もその一環であり、実質的に「人民元カード」として国内店舗でのネット決済に使われることを狙ったものである。
金融関係者によると、この厳しい規制方針はマスターカードとEZLinkの提携のみならず、アメリカン・エキスプレス(American Express)とテンセント傘下のTenPay(財付通)が進めていた同様の事業提携にも影響を与えたとされる。
この事件は、中国政府が国内のクリアリング(決済清算)市場の独占権(銀聯の独占)を強力に維持し、外資系ネットワークの国内決済プロセスへの浸透を徹底的に排除する姿勢を示した象徴的な事例と言える。
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