
中国のプレミアム新興EVメーカーであるLi Auto(理想汽車)が、最新のフラッグシップSUV「理想L9 Livis」を正式にリリースしました。
今回の新型モデルは、プレセール時の告知価格55.98万人民元に対し、正式発表の価格は50.98万人民元(約1,120万円)と戦略的なプライシングで登場。最先端のAIとロボティクス技術を車両のハードウェアとソフトウェアに深く統合した「身体性AI(Embodied AI)」の体現をテーマに掲げており、業界の大きな注目を集めています。
本記事では、この新型L9 Livisに盛り込まれた最先端テクノロジーと、中国EV市場における競争状況について解説します。
新型理想L9 Livisのスペックと技術仕様
理想L9は、初代の発売以来、中国の40万人民元以上の高級大型SUVセグメントにおいてトップシェアを確立したファミリー向けの「3列6人乗り」功勲モデルです。今回登場した「Livis」バージョンは、自動運転からシャシー制御までを自社設計のAIアーキテクチャで一元化する、理想汽車の最高峰グレードです。
同クラスの競合であるAito M8(問界M8:35.98万〜44.98万人民元/約790万〜990万円)や、従来ガソリン車の競合であるアウディQ5L(30.98万〜42.98万人民元/約680万〜940万円)といった強豪と比較しても、ワンランク上のテクノロジーパッケージを提供しています。
1. 自社設計の5nm半導体と圧倒的算力
自動運転とシステム制御を処理するため、理想汽車が自社開発した5nmプロセスのAI半導体「馬赫100(Mach 100)」を2基搭載。システム全体の算力は驚異の2560 TOPSに達し、将来の完全自動運転(レベル4以上)も見据えた十分な計算余力を備えています。
2. 360度の周囲感知システム
Hesai(ハサイ)製などの超高解像度LiDAR(レーザーセンサー)を車体に計4基搭載。死角のないリアルタイムの三次元環境認識を実現しています。
3. 次世代のシャシー制御と800Vアクティブサスペンション
世界初となる「完全線控(ステア・バイ・ワイヤおよびEMBブレーキ)」シャシーを採用し、800V駆動のフルアクティブサスペンションを統合。ミリ秒単位で路面状況を予測・解析し、四輪を独立制御して揺れを極限まで抑える快適な乗り心地を実現します。
車を「知的なパートナー」にする車載AI
理想汽車の李想(リー・シャン)CEOは、「身体性AI(具身智能)は、優れたハードウェアにこそ宿るべきである」と発言しています。同社は、単なる移動ツールとしての車ではなく、自ら認識・理解し、サービスを提供する「知的な移動ロボット」としての車作りを目指しています。
車内にはマルチモーダル対応の大規模言語モデル(LLM)が常駐。ドライバーや同乗者の視線、表情、音声のトーン、さらにはジェスチャーを統合的に理解します。例えば、「あそこを見て」と指差すだけでナビが目的地を認識したり、乗員の体温や好みを分析してエアコンやシートヒーター、音楽などを先回りして最適化する「パーソナルAIアシスタント」機能が特徴的です。
市場での課題と日本市場への示唆
理想汽車は中国市場でトップランナーとして急成長を遂げてきましたが、純電気(BEV)フラッグシップモデル「MEGA」のデリバリー遅延や競合他社の猛追により、一時期販売の伸びが鈍化する局面もありました。
この新型理想L9 Livisが成功するかどうかは、搭載されたAIアシスタントやフル線控シャシーによる「これまでと次元の違う快適な移動体験」を、ユーザーにどれだけ実感させられるかにかかっています。40万人民元を超えるプレミアム層の顧客は、スペックの数値だけでなく「独自のライフスタイル価値」に対して対価を支払う傾向が強いためです。
日本の高級SUV市場(レクサスRXや欧州ブランドなど)は、伝統的な信頼性やブランドステータスにおいて非常に強いアドバンテージを持っています。しかし、「車載OSとAIインフラ(訓練・推論)の垂直統合」「走行データをリアルタイムフィードバックして毎週ソフトウェアをOTAアップデートする」という中国新興勢力のやり方は、これからの「SDV(ソフトウェア定義車両)」時代において、日本のメーカーにとっても極めて重要な変革のベンチマークとなっています。
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