
世界の電気自動車(EV)市場において、新興メーカー各社は車両の電動化だけでなく、生成AIや高度な車載プロセッサを用いた「走るインテリジェント空間」へのアップグレードを競っています。
中国の新興EVメーカーである「リープモーター(Leapmotor、零跑汽車)」は、創立10周年の節目において、同社初となるフラッグシップ大型SUV「D19」およびラグジュアリーMPV「D99」を同時発表しました。リープモーターは、世界大手の監視カメラメーカー「大華技術(Dahua Technology)」の共同創業者である朱江明(Zhu Jiangming)氏によって2015年に設立された新興メーカーです。2023年には欧州自動車大手のステランティス(Stellantis、プジョーやジープ等を傘下に持つ)から約15億ユーロ(約2,400億円)の出資を受け、グローバル販売を担う合弁会社「リープモーター・インターナショナル」を設立したことで国際的な注目を集めています。
本記事では、同社が新たに発表したハイエンドモデルに搭載された車載AI、電源アーキテクチャ、および同社の長期的なグローバル成長ビジョンについて解説します。
D19:Leapmotor初の最高峰スマートSUV
D19は全長5,252mm、ホイールベース3,110mmという堂々たる体躯を持ちながら、ボディ表面の段差を極限まで排除したミニマルかつ空力特性に優れたエクステリアデザインが特徴です。「寰宇之境」と呼ばれるSF的なデザインの貫通型LEDヘッドライトが車幅を際立たせ、サイドウインドウとピラーの段差をゼロにする「フラッシュマウントサイドウィンドウ」の採用により、車内の風切音を劇的に低減しています。
ラグジュアリーに仕立てられた室内空間
シートレイアウトには3列6人乗り(2+2+2)および7人乗りの2つの仕様が用意されており、有効車内空間率は88%に達します。シート表皮には触感に優れた最高級セミアニリンレザーを採用し、前席には10点の空気圧マッサージ機能、2列目には快適性を極限まで高めた「ゼログラビティ(無重力)シート」を搭載。さらに、高濃度酸素を供給するクリーンキャビンシステムや、23スピーカー(総合出力2,304W)からなる「Leap Sound」オーディオシステム、インテリジェント冷温蔵庫(8.1L)などの高級装備を標準配備しています。
デュアルプロセッサが支える車載AIエージェント
D19は、最新の車載電子アーキテクチャ「LEAP 4.0」を採用。心臓部にはクアルコム(Qualcomm)の次世代車載チップ「Snapdragon 8797」をデュアル(2基)搭載し、システム合計で1,280 TOPSという極めて強力なニューラル演算処理能力を確立しています。
これにより、車載のオンデバイス大規模言語モデル(LLM)が常時稼働し、乗員の会話内容の要約、車内からの音声によるオンライン注文、パーソナライズされた情報の自動整理などをスムーズに実行します。さらに、マルチモーダルな視覚言語アクション(VLA)モデルによって制御される先進運転支援システム(ADAS)は、自然言語での直感的なナビゲーション指示や車線変更の要請に対応し、実用的な自動運転支援を提供します。
航続距離と高電圧急速充電システム
駆動方式には2つのタイプが用意されています。
- レンジエクステンダー(EREV)モデル:80.3kWhのバッテリーパックを搭載し、CLTC基準で最大500kmのEV航続走行が可能。
- 純電気自動車(BEV)モデル:115kWhのCATL(寧徳時代)製超高速充電バッテリーを搭載し、航続距離720km以上を確保。
BEVモデルは合計出力540kWのトリプルモーターシステムを搭載し、0-100km/h加速を約3秒で駆け抜けます。また、800Vの高電圧急速充電プラットフォームに対応し、バッテリー残量30%から80%までの充電を約15分で完了します。
D99:ショーファードリブンを見据えたラグジュアリーMPV
D99は全長5.2m、全幅約2.0m、ホイールベース3.1m超の大型MPVであり、D19と同様のフロントフェイスデザイン「寰宇之境」を採用しています。ボディサイドのなめらかな彫刻的曲面とサイドガラスのフラット化により、後席乗員に遮るもののない圧倒的な開放感を提供。ルーフには最大1.46平方メートルの大型パノラマサンルーフが配され、紫外線を99.9%カットしつつ、室内の温度上昇を防いで明るい採光を確保します。
上質な移動体験を追求したアメニティ
シートやエアコン、オーディオの仕様はD19のラグジュアリー構成を引き継いでおり、2列目の独立シートにはマルチポジション調節が可能なゼログラビティ機構を採用。森林クリーンキャビンシステム、ハイパワーアンプシステム、アロマシステム、1,600万色に同調するアンビエント照明を完備しています。
先進の車載テクノロジーと優れた車体剛性
D99もD19と共通のLEAP 4.0アーキテクチャおよびデュアルQualcomm 8797チップで動作し、大規模AIモデルを活用したスマートコックピット機能が組み込まれています。車体骨格には高張力鋼板を多用し、ねじり剛性は46,682N·m/degに達し、万一の衝突時における高い乗員保護性能と安定した乗り心地を両立させています。
グローバルスマートカー市場におけるLeapmotorの位置づけと展望
Leapmotorが示す「ソフトウェアとハードウェアの一体型開発」は、従来の自動車づくりの速度を大幅に凌駕しています。
同社は「今後10年でグローバル年間販売台数400万台を達成する」という野心的な事業目標を掲げており、ステランティス・グループとの合弁企業を通じて欧州やアジア太平洋地域などのグローバル展開を強力に推進しています。この戦略において、D19やD99はブランドイメージを牽引する最高級モデルとしての役割を担っています。
日本国内の高級ミニバンやSUVの市場(トヨタ・アルファードやレクサス・RX等)においても、スマートフォンのように進化し続ける車載ソフトウェア、800V急速充電による利便性、そして1,200 TOPSを超える車載コンピューティングパワーを備えた次世代スマートEVの台頭は、既存の伝統的自動車メーカーに対する新たな競争圧力を生み出していくことになります。車載AIが乗員の快適なパートナーとして機能する未来は、すでに現実のものとなっています。
出典: Huxiu
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