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    中国のデジタル人民元「DCEP」:中央銀行デジタル通貨の実証実験

    中国人民銀行が開発を進めるデジタル人民元「DCEP」の内部実証実験が本格始動。四大国有銀行や大手テック企業(アリババ、テンセント)を巻き込み、深センや蘇州など4都市の特定エリアで展開される決済ウォレットの機能や、二重オフライン決済などの技術的優位性を解説する。

    デジタル人民元のロゴとイメージ
    デジタル人民元のロゴとイメージ
    実証実験が始まった中国中央銀行のデジタル通貨「DCEP」ウォレット(イメージ画像)

    「ついにデジタル人民元のウォレットアプリが公開された!」

    2020年4月14日夕方、中国国内のブロックチェーン関係者や暗号資産コミュニティのチャットグループは、突如として拡散された数枚のスクリーンショットによって騒然となった。流出した画像は、中国農業銀行がクローズドテスト用に開発したとみられる、デジタル人民元「DCEP」専用ウォレットアプリの動作画面だった。

    このテスト用インターフェースによると、DCEPウォレットは、法定通貨とデジタルアセットの交換、デジタルウォレットの管理、トランザクション履歴の確認、ウォレットのチャージといった基本機能に加え、バーコード・QRコード決済、送金、非接触のタッチ決済など、既存のモバイル決済を網羅する仕様となっている。

    DCEPとは何か?:中央銀行が発行する「デジタル通貨」

    DCEP(Digital Currency Electronic Payment)は、中国の政府および中央銀行である「中国人民銀行」が国家プロジェクトとして開発を進めてきた、世界初となるソブリン・デジタル通貨(CBDC)のプロジェクトである。

    DCEPの公式な位置づけと技術仕様が公にされたのは、2019年10月29日に上海で開催された「外灘金融サミット」である。国家開発改革委員会など複数の機関の幹部を歴任した中国国際経済交流センター副理事長の黄奇帆氏は、「DCEPはブロックチェーン技術と中央銀行のソブリン信用を組み合わせた、新しい暗号化電子通貨システムである」と言及した。

    中央銀行の関係筋によると、今回流出したテストウォレットは、一部のホワイトリスト(事前登録済み)顧客限定のクローズドテスト用であり、まずは深セン、西安、成都、蘇州の4大都市および特定の決済シナリオにおいて実証実験が開始されている。農業銀行に加え、中国工商銀行、中国建設銀行、中国銀行の他の「四大国有商業銀行」でも、内部テスト用のウォレットアプリが個別に稼働している模様だ。

    DCEPの5つの強みと技術的特徴

    既存のアリペイ(Alipay)やWeChat Pay(微信支付)などの民間のサードパーティ決済サービスと比較して、中央銀行が自ら発行するDCEPには以下のような決定的な優位性がある。

    1. デフォルト防止(債務不履行リスクのゼロ化): 民間決済会社とは異なり、中央銀行の直接の債務であるため、サービス事業者の破綻リスクがなく、元本が完全に保証される。
    2. 追跡可能性(マネロン・不正防止): 資金の流れをリアルタイムで追跡できるため、脱税、汚職、マネーロンダリング、テロ資金供与といった金融犯罪を劇的に抑制できる。
    3. ソブリンクレジット(国家の信用): 商業銀行の預金ではなく、国家が価値を直接保証する法定通貨(M0:流通する現金と同等)であるため、法的な強制通用力を持つ。
    4. 二重オフライン決済(インターネット不要の決済): DCEP最大の強みとされる技術。送信側と受信側の双方がオフラインであっても、NFC(近距離無線通信)を利用してスマートフォン同士を「タッチする」だけで決済が瞬時に完結する。
    5. 流通方向の制御(スマートコントラクトの応用): 政府が補助金を支給する際、特定の用途(例:農業支援、教育支援)にのみ使用できるように資金にプログラム制限をかけることができる。

    巨大ビッグテックと銀行による二層型発行構造

    米フォーブス誌の報道によると、中国人民銀行はDCEPの発行において「二層型運営体制(Two-Tier System)」を採用している。中央銀行が直接一般の消費者に発行するのではなく、中央銀行が商業銀行やその他の指定決済機関にデジタル通貨を発行し、そこから民間へと流通させる仕組みである。

    初期の発行・流通に関わる指定パートナーとして、前述の四大国有銀行のほか、銀聯(UnionPay)、そしてモバイル決済のインフラを握るアリババ(Alibaba)やテンセント(Tencent)といったメガテック企業7機関が指定されている。

    今回、農業銀行でのテストウォレットの流出は、世界初の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の本格的な実用化が秒読み段階に入ったことを示している。決済市場における国家インフラの再定義は、人民元の国際化(米ドル依存からの脱却)に向けた中国のグローバル金融戦略の幕開けとも言える。

    出所:DeepFlow、Forbes、中国人民銀行公式発表

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