中国の金融当局による相次ぐ規制強化が、AlipayやWeChat Payに代表されるサードパーティ決済事業者の独占的拡大に一定の制限をかけたことで、伝統的な商業銀行の収益性が回復し始めています。
中国の主要商業銀行が発表した半期決算データによると、2018年上半期における商業銀行全体の純利益は1.03兆元(当時のレートで約17兆円)に達し、前年同期比で6%増となりました。
リテールへのシフトとテック企業との「共生」
銀行の業績回復を牽引したのは、「リテールバンキング(個人向け金融)の成長」と「徹底したコストコントロール」の2点です。
中国におけるリテール分野の雄である招商銀行(China Merchants Bank)は、上半期純利益の57%を個人向け業務から生み出しています。また、平安保険グループ傘下の平安銀行(Ping An Bank)もリテール特化型へ舵を切り、総収益の51%を同部門が占めるに至りました。
商業銀行がリテールに注力する背景には、消費者側のデジタル体験に対する要求の高まりがあります。これに対抗するため、自社開発のみならず、アント・グループ(螞蟻金服)やエクスペリアン(Experian)といった外部の優れたフィンテック(Fintech)企業やクレジットスコア事業者と提携する銀行が急増しています。
AIとビッグデータによる業務プロセスの全自動化
フィンテック技術への積極投資は、銀行のバックオフィス業務に根本的な変革をもたらしました。
- 自動化された顧客分析と与信リスク管理
- 機械学習による不正取引のリアルタイム検知
- 人件費の削減とオペレーション効率化
ビッグデータに基づく高精度な顧客プロファイリングが可能になったことで、銀行は理財商品(資産運用商品)のパーソナライズ販売や、インターネット経由での無担保ローンの融資実行など、新たな高収益ビジネスへ参入するチャンスを得ています。
また、モバイルバンキングアプリの高度化により、実店舗の窓口での待ち時間が劇的に短縮され、ユーザーの顧客満足度が向上。さらに、平安銀行は自社のデジタル転換ノウハウをパッケージ化し、中小銀行向けの金融クラウドサービスとして提供する「RaaS(Retail as a Service)」ビジネスも開始しています。
信用スコアと与信インフラにおける今後の課題
こうした変化は前向きな一歩ですが、中国の金融DXは依然として初期段階にあります。
最大のボトルネックは、消費者金融(個人向け融資)の恩恵を受けられるのが、いまだ一部の属性が高い層に限られている点です。オンライン融資市場における詐欺やデフォルト(債務不履行)のリスクが高いため、銀行は依然としてクレジットカード保有者や、一定以上の所得証明がある顧客の申請のみを優遇する保守的な融資スタンスを崩していません。
中国ではアリババの「芝麻信用」などの民間信用スコアが普及しているものの、公的な中央銀行の信用情報データベース(征信システム)との統合や、全国民を網羅する精緻な与信判断インフラとしては未完成であり、ビッグデータや機械学習のポテンシャルを十分に活かしきれていないのが実情です。
日中銀行業界のデジタル対比
日本国内では当時、伝統的なメガバンクや地方銀行がようやくデジタル推進部を立ち上げ、API連携の模索を始めた段階でした。一方、中国の商業銀行はフィンテックベンチャーの攻勢に危機感を募らせ、彼らを競合として排除するのではなく、システムやデータを融通し合う「共生関係」を早期に構築しました。従来のレガシーシステムと最新のAI・ビッグデータプラットフォームの融合は容易ではありませんが、このデジタルシフトに対応できない銀行は、急速な勢いで淘汰される局面に直面しています。
情報源:Kapron
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