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    中国キャッシュレス決済の光と影:進化を続ける決済インフラ

    中国で急速に進むキャッシュレス社会。その背景にある政府の政策やモバイル決済の普及による銀行窓口業務の削減などの社会変化を解説。さらに、高齢者のデジタルデバイド問題やシステム障害時のセキュリティリスクなど、先進的な取り組みに潜む課題を紐解きます。

    中国におけるモバイル決済とキャッシュレス社会の普及イメージ
    中国におけるモバイル決済とキャッシュレス社会の普及イメージ

    世界では、現金を用いない電子決済がインターネット時代における技術による生活の変化の大きな潮流となっており、「インターネットプラス(インターネット+)」を代表するビジネスモデルにもなっている。とはいえ、完全なキャッシュレス社会は本当に現実のものになりうるのだろうか。

    専門家の予測によると、今後10年間で仕事の約50%が人工知能(AI)や情報技術(IT)に代替され、中でも金融産業が真っ先に影響を受けるという。AIやITを活用したシステムは簡便かつ迅速で、労働力の大幅な削減を可能にするからである。この業務効率化と人件費削減だけでも、キャッシュレス社会を実現する大きなメリットと言える。

    ユーザーはモバイルアプリ(スマートフォン決済)を使うことで、日常生活におけるあらゆる消费や取引をキャッシュレスで完結できるようになった。人々に利便性を提供する一方で、金融業の窓口業務やバックオフィス業務は大幅に削減されている。中国銀行業協会がまとめた統計によると、2016年に中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設銀行の3行だけで窓口業務担当者が約6万人削減された。また、過去4年間に大中規模の銀行33行で削減された行員数は32万人を超え、全国の銀行業の全行員の約10分の1に達した。削減された行員の大部分は、従来の銀行業務で中心だった窓口担当者である。

    現在、中国のキャッシュレス決済は主に「Alipay(支付宝)」と「WeChat Pay(微信支付)」の2大巨頭を通じて行われており、ネットユーザーの約95%がこのいずれかを選択している。当時のデータでは、Alipayの実名登録ユーザーは4億5,000万人以上、WeChatの月間アクティブユーザーは6億人に達していた。

    インターネット技術を基盤とした電子決済が普及することで、人々の生活には多くのメリットや便宜がもたらされる。

    第一に、キャッシュレス社会は紙幣の製造や流通にかかる社会コストを大幅に節約できる。例えば、偽札防止技術が世界で最も進んでいるとされるスイスフラン紙幣は、先進技術が詰め込まれている分、造幣コストも高い。試算によると、1,000スイスフラン(当時のレートで約11万円相当)紙幣の造幣コストは3.4元(約54円相当)にのぼる。中国は人民元紙幣の造幣コストを公表していないが、100元札(当時のレートで約1,600円相当)の製造コストは1元(約16円)前後とみられている。キャッシュレス化が進めば、これらの物理的な貨幣の製造・輸送・管理コストがほぼゼロになる。

    第二に、不特定多数の手を介する現金流通が減ることで、感染症の拡大抑制につながる。また、店舗や輸送中の現金を狙った強盗や盗難、偽札詐欺といった現金特有の犯罪も物理的に消滅する。

    現在、世界に先駆けてキャッシュレス化を進めているのがデンマークである。同国では2012年時点で取引の84.2%がデビットカードなどの電子決済で行われていた。デンマーク政府は2016年1月より、衣料品店やレストラン、ガソリンスタンドなどの小売店に対し、現金での支払いを拒否する権利を認めている。

    しかし、キャッシュレス決済はすべての人に等しく利便性をもたらすわけではない。通信環境が整備されていない地域や、スマートフォンなどのデジタル端末の操作に不慣れな高齢者にとっては、逆に障壁となる。キャッシュレス社会の先進国であるデンマークでも、この问题は顕在化している。

    デンマークの地方部に住むリタイア世代の高齢者の多くは、キャッシュレス決済はおろか銀行カードの利用にも消極的であり、政府に対してキャッシュレス化のペースを落とすよう求めている。社会全体がデジタル決済へ移行する中で、高齢者がシステムから取り残され、疎外感を抱くリスクは無視できない。

    また、電子決済は現金の物理的リスクを解消する一方で、新たなセキュリティ問題を引き起こす。

    1つは、人為的ミスや悪意あるオンライン詐欺、ハッカーによる攻撃である。クレジットカードのスキミングや不正アクセス、フィッシング詐欺などは世界中で増加傾向にあり、デンマークでも路上での現金強盗が減った一方で、デジタル上の詐欺犯罪が増加している。

    もう1つは、インフラの脆弱性である。巨大な災害やハッキングによって通信網や決済サーバーがダウンした場合、社会全体の経済活動が一瞬にして麻痺する。現金という「オフラインの代替手段」を持たない完全キャッシュレス社会において、システムの崩壊は社会生活そのものの停止を意味する。利便性とレジリエンス(復旧力)のバランスをどう取るかが、今後の大きな課題である。

    情報源:北京日報

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