アジア各国では、電子ウォレットやプリペイドカードからスマートフォン決済アプリ、銀行間口座送金など、様々な決済サービスが普及しつつある。これらのサービスは、現金を携帯する必要がない利便性と、高い防犯性を提供している。しかし、一部の国や地域ではセキュリティへの懸念、インフラの不足、金融リテラシーのばらつきなどの問題があり、現在も現金支払いが主流である。この記事では、アジア諸国のモバイル決済事情を3回に分けて紹介する。

韓国:規制緩和と大手IT企業の参入で急成長する市場
韓国では、モバイル決済アプリやデジタルウォレットの利用が急速に拡大している。特に個人間送金アプリ「Toss(トス)」は、オンライン送金時の複雑な認証手続きを大幅に削減し、若年層を中心に広く普及した。
また、オンラインショッピングにおいては「Naver Pay(ネイバーペイ)」が強力なシェアを握り、日常の少額決済でも主要な支払い手段となっている。さらに、スマートフォンにプリインストールされた「Samsung Pay(サムスンペイ)」は、磁気ストライプ(MST)と非接触(NFC)の双方に対応しているため、既存のクレジットカード用端末がそのまま使える手軽さから圧倒的なユーザー数を誇る。
2015年に政府がフィンテック分野の規制緩和(事前セキュリティ審査の廃止など)を行って以降、ネイバーやカカオ(Kakao Pay)などの大手インターネット企業による投資が加速した。特にカカオペイは、中国アリババグループ傘下のアント・フィナンシャル(Ant Financial)から約2億ドルの巨額の出資を受け、そのエコシステムをさらに強化している。
日本:世界的なFeliCaインフラと、依然として高い現金依存
日本では、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードに採用されているソニーの「FeliCa(フェリカ)」技術が極めて高度に発達している。「Touch to Pay(タッチ決済)」の利便性は、駅の改札からコンビニ、タクシーに至るまで広く浸透している。しかし、小売店舗全体の決済に占めるキャッシュレス比率は、韓国や中国と比べて依然として低い水準に留まっている。
日本銀行の調査によれば、電子マネーの決済総額はクレジットカード決済に比べて小さく、現金が今なお最強の支払い手段として機能している。これは、偽札が極めて少ないことや治安の良さ、ATM網の利便性などが背景にある。とはいえ、Apple PayやGoogle Payといったグローバル規格のモバイルウォレットへの対応が進んでおり、徐々に非現金決済への移行(キャッシュレスシフト)が進みつつある。
シンガポール:乱立する電子決済規格と統合へのアプローチ
シンガポールでは電子決済の選択肢が豊富にあるものの、規格が乱立していることが普及の足かせとなっていた。このため政府は、異なるサービス間での相互運用性を高めるため、携帯電話番号や国民IDのみで送金できる「セントラル・アドレッシング・スキーム(現在のPayNow)」を立ち上げ、インフラの標準化を進めている。
また、現地大手の決済ネットワーク「NETS(ネッツ)」は決済端末を統合し、Apple Pay、Android Pay(現在のGoogle Pay)、Samsung Pay、DBS PayLah!など、多様なモバイル決済手段を1台の端末で処理できる共通端末の配備を進めている。
しかし、依然として最低利用金額の設定や、複数のアプリを切り替えて使う煩わしさが残るため、現金を引き出す利便性が上回るシーンも多い。政府主導による決済標準化の行方が、キャッシュレス化加速の鍵を握っている。
当時の日本市場は、FeliCaという日本独自の仕様と、世界標準のNFC規格との間でせめぎ合いがあり、さらに2018年後半の「100億円キャンペーン」に代表されるQRコード決済(PayPayなど)の大波が訪れる前の、静かなる過渡期であった。これに対し、韓国はクレジットカード社会からIT企業によるモバイル決済へ、シンガポールは政府主導の規格統一へと、それぞれ異なるアプローチで脱現金を模索していた。
情報源: 海峡ニュース、ChinesePayment翻訳編集
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