
10年前、中国のEC(電子商取引)市場をめぐる激しいシェア争いにおいて、当時世界最大手だったeBayは、新興のアリババ(Alibaba)に敗退し撤退を余儀なくされました。そして今日、中国のEC市場は当時の10倍以上に膨れ上がり、アリババは決済、ビッグデータ、さらにはハリウッド映画への投資までを手がける巨大なグローバルコングロマリットへと進化を遂げました。
日本のモバイル決済市場においても、後にソフトバンクグループとアリペイの技術協力から生まれた「PayPay」が圧倒的な地位を築くことになりますが、当時すでにグローバルでは、中国発の決済プラットフォームが欧米のテック巨人を揺るがす存在になっていました。
ECの戦場はスマートフォンの普及によって一気にモバイルへとシフトしています。調査会社ユーロモニターの予測によると、世界のモバイルEC市場は今年末には9,720億ドル(約101兆円)規模に達し、さらに2021年にはモバイル決済総額が3兆ドル(約312兆円)の大台に乗ると見られています。しかし、この巨大な市場成長において、米国企業は大きく出遅れています。
現在、米国のモバイル決済業界には絶対的な王者が不在です。Apple Payがその座に最も近く、PayPalも巻き返しを図っています。しかし、その足元は、すでに4億5,000万人以上のアクティブユーザーを抱える中国最大の決済サービス「アリペイ(Alipay / 支付宝)」によって脅かされようとしています。
アリババ傘下のアント・フィナンシャル(Ant Financial、現アントグループ)が展開するアリペイは、アジア、欧州、そして北米市場へとその勢力を急速に広げています。10月24日には、米国の決済処理大手ファーストデータ(First Data)およびベリフォン(Verifone)と提携し、米国市場に正式参入することを発表しました。
アリペイの海外進出スピードは極めて迅速です。わずか1ヶ月の間に、世界70カ国・地域の8万に及ぶ小売店舗がアリペイの導入を決定しました。成田国際空港やミュンヘン空港、オークランド空港など世界主要10大空港に導入されたほか、世界最大級の免税店グループであるDFSは、サンフランシスコ国際空港内の店舗でアリペイを正式導入することでアント・フィナンシャルと合意しました。
アリペイのグローバル戦略における第1段階は、国内で使い慣れたモバイル決済を海外でもそのまま利用したいという、膨大な「中国人海外旅行者」の需要を確実に取り込むことです。昨年だけで1億2,000万人以上の中国人観光客が海外を訪れ、その消費総額は2,000億ドル(当時のレートで約21兆円)に迫っています。
この巨大なインバウンドマネーを引き寄せるため、世界の小売業者はこぞってアリペイのインフラ導入を進めています。ロンドンの高級百貨店ハロッズやセルフリッジズはすでに導入を完了しており、米国の百貨店大手メイシーズやノードストロームも間もなく対応する予定です。
決済市場において、アリペイの独走状態は続いています。Apple PayやPayPal、その他の米国系決済サービス企業は、この世界規模の「アリペイ旋風」と米国本土への侵攻を、有効な対抗策を見出せないまま注視しているのが現状です。もしアリペイが米国で一般消費者向けの決済ツールとしても普及し始めれば、既存のAppleやPayPalにとって直接的な脅威となるのは避けられません。
10年前、アリババはeBayを中国市場から追い落としました。当時のeBayは敗れたものの、対抗のための激しい戦いを繰り広げました。しかし今回、Apple PayやPayPalは、アリペイの米国進出に対して明確な防衛策を打てていないように見えます。
ユーロモニターによると、現在スマートフォン経由で決済を行う米国人はわずか15%にとどまりますが、2020年には46%まで増加すると予測されています。米国テック勢が3兆ドル規模のグローバルモバイル決済市場での主導権を取り戻すためには、一刻の猶予も残されていません。
情報源:Forbes
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