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    中国モバイル決済の海外進出:観光客を追う二大巨頭の争奪戦

    中国人観光客の旺盛なインバウンド消費を背景に、WeChat Pay(微信支付)とAlipay(支付宝)が韓国、日本、タイなどの海外市場で激しいシェア争いを展開。決済をフックにした送客マーケティングや、インドのPaytmへの技術支援など、多角化するグローバル展開の裏側を追います。

    韓国の免税店で利用されるWeChat PayやAlipayなどのモバイル決済サービス

    海外旅行に出かける中国人観光客の旺盛な消費意欲は、オーケストラの指揮棒のように、中国のインターネット企業がグローバル市場で展開する戦略の方向性を決定づけています。

    韓国・ソウルの明洞にある新世界免税店の営業担当マネージャーである金美英(キム・ミヨン)氏は、「当店の1日あたりの総取引額のうち、約20%がWeChat Pay(微信支付)による決済です。WeChat Payは今年5月のオープンと同時に導入しました」と語ります。

    韓国の免税店で利用されるWeChat PayやAlipayなどのモバイル決済サービス

    韓国観光公社(KTO)の最新データによると、今年7月に韓国を訪れた中国人観光客は延べ91万人に達し、前年同期の3倍以上に跳ね上がりました。こうした中国人による海外での購買力向上は、日本、タイ、ベトナムといった周辺国・地域でも同様に見られる現象です。WeChat(微信)やAlipay(支付宝)、現地店舗情報プラットフォーム「大衆点評(Dianping)」といった中国の主要アプリは、この莫大なインバウンド消費を確実に取り込もうと、競うように海外事業の強化に乗り出しています。

    Alipayはすでに2年前から、海外での免税手続き(税還付)の電子化や、海外の公共交通カードの発行などを足がかりに現地ビジネスに深く参入してきました。さらに、インドなどの新興市場では、決済システムそのもののインフラ技術や不正検出(リスクコントロール)技術の提供を軸にしたB2B展開も進めています。

    「レジのスタッフから、オマケがもらえるからとWeChat Payでの決済を勧められました」。ソウルの免税店で初めてWeChat Payを使って化粧品を購入した趙さんはこう振り返ります。もらったのは10元(約150円)相当のフェイスマスク2枚でしたが、「中国国内でモバイル決済が普及したばかりの頃、お得なキャンペーンでワクワクした記憶が蘇った」と言います。

    プレゼントなどの付加価値サービスによる営業販売の裏側には、決済プラットフォームの海外市場争奪戦があります。新規ユーザーを獲得するため、中国のモバイル決済市場で見慣れたサービス戦略が海外にも広がっています。今年の春節(旧正月、2016年は2月8日)には、WeChatが中国人観光客の韓国での買い物に対するキャッシュバックサービスを打ち出し、WeChat Payの海外利用率の向上を図りました。

    金融事業からスタートしたAlipayも同じようにモバイル決済市場のシェア獲得を目指し、今や国内で大規模に行われるオフラインの戦いが周辺国家で急速にコピーされつつあります。ソウルの街角では、WeChat PayとAlipayのどちらも使える店舗をよく目にします。コンビニエンスストアのセブンイレブンやポロロ・ブランドの店などがそうです。中国人観光客がモバイル決済でどこを選ぶかわからないため、韓国の企業は中国企業との排他的な協力合意をなかなか締結できずにいます。

    中国のモバイル決済企業の海外布陣で最も目立った戦略は、中国人観光客の動きにぴたりと密着するということです。中国人観光客が好んで行く場所で各社の決済サービスを展開し、より正確かつ確実にエリアや買い物シーンを細分化して事業を展開しています。

    中国人観光客の買い物熱を肌で感じている金部長は、「今後は店のWi-Fi設備をさらにバージョンアップして、中国人観光客の携帯電話決済がより便利に行えるようにします。ソウル市は5月1日を『中国人観光客ウェルカムデー』とし、過去2年ほどの間にみられた日本への大量の中国人観光客の流れをせき止めてこちらに流れるようにしたい考えです」と話します。

    欧米と同じく、韓国もクレジットカード決済が主流で、タクシーでもカードが使えます。アリババ(Alibaba)やテンセント(Tencent)が韓国でオフラインモバイル決済の陣地を確保しようと懸命になるのをよそ目に、韓国の人々の間でモバイル決済はあまり普及していません。韓国人は決済の安全性を重視し、このことがモバイル決済の習慣が根付かない一因と考えられます。

    WeChat Payの海外展開により現地の店舗は新しい決済方法のレッスンを受けることになり、さらに決済を入り口として、海外の店舗と中国人消費者との相互連動が始まっています。関係者によると、WeChat Payは海外のオフライン消費の一部をオンラインに呼び込みつつあると言います。例えば韓国の免税店は自前のオンラインショップをもっているところがあり、中国人消費者が免税店でオフラインのWeChat Payによる決済を行うと、そのショップからお得な情報が送られてきて、次の海外通販が促進されます。今後はWeChatが利用者の画像データを海外の店舗に提供し、海外店舗がより正確なビッグデータに基づくマーケティングを展開するのを後押しする可能性もあるとのことです。

    インドは韓国と異なり、金融市場が「飛び級」で発展する国です。クレジットカードと伝統的金融機関が十分に発達していない中、モバイル決済が先に春を迎えました。アント・グループが出資を2回行ったインドのモバイル決済企業Paytmは、現在のユーザー数を1億3500万件と発表しています。カフェやコンビニだけでなく、公共交通ツールのトゥクトゥク車もPaytmがカバーする消費シーンです。Alipayはインド市場でITの基礎的技術やリスクコントロール技術をより多く打ち出しており、日本や韓国でのように大攻勢をかけることはなく、オフライン市場を地道に攻めています。欧州市場では、オンラインの税還付サービスを皮切りに徐々にオフラインの取引場面に切り込み、現在、税還付サービスを受けられる国は20カ国以上になりました。

    WeChat Payはこれまでに台湾、香港、日本、韓国、タイ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなどの国・地域に進出しました。海外での決済事業展開は掘り下げの段階に入っており、長期的にみて、海外決済はオフラインの入口に過ぎず、その背後にはWeChatの中国におけるソーシャルネットワーキング・サービスチェーンに基づいた金融モデルおよびオフライン業態を海外に持ち込もうとの計画があります。今後、利用者が中国人観光客から拡大して、中国人観光客の訪問先の人々へと広がる可能性もあります。

    情報源:第一財経日報

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