テンセント「WeChat Pay」の日本本格上陸とインバウンド需要
中国のネットサービス大手であるテンセント(騰訊)は、日本国内においてスマートフォンを活用したモバイル決済サービス「WeChat Pay(微信支付)」の展開を本格化させています。当時、中国国内で3億人以上が日常的に利用していたこの決済インフラについて、日本国内の加盟店数を年内に1万店舗まで拡大することを目指し、急増する訪日中国人観光客の利便性向上とインバウンド消費の取り込みを強力に後押ししました。
それまで中国人観光客による日本国内での決済手段はプラスチックカードの「銀聯(UnionPay)カード」が主流でしたが、スマートフォンによるQRコード決済へのシフトにより、日本の小売市場にも決済イノベーションの波が押し寄せています。
パートナーシップによる強固な加盟店開拓体制
テンセントは、日本市場での普及を加速させるため、訪日観光客のクチコミ分析などを手がけるホットリンク社などと提携し、小売店への導入提案を本格化しました。
店舗側にとっての最大のメリットは、導入ハードルの低さです。高価な専用POS端末を新調することなく、iPadなどの手持ちのタブレット端末に専用アプリをインストールするだけで対応可能です。決済の流れは極めてシンプルで、観光客が自身のスマートフォン上でWeChat PayのQRコードを表示し、店舗側がタブレットのカメラでスキャンするだけで即座に支払いが完了します。
また、訪日観光客は自身の銀行口座から使い慣れた人民元で支払いを行い、日本の店舗には日本円で精算される仕組みとなっており、この外貨決済プロセスのバックエンドは中国建設銀行が支えています。
急拡大するインバウンド消費と銀聯カードへの追撃
訪日外国人全体の約4分の1を占める中国人の消費力は、他国・地域を圧倒しています。観光庁のデータ(2015年)によると、中国人観光客の年間消費額は1兆4,174億円に達し、インバウンド総消費額の約4割を占めていました。また、1人あたりの旅行支出額も28万円を超え、全客層の平均値(約17.6万円)を大きく引き離しています。
WeChat Payのプロダクト担当シニアディレクターである黄麗氏は、「日本国内での導入店舗数を早期に2万店規模まで引き上げる」と強調しており、先行していたクレジットカード型の銀聯決済の牙城をスマートフォンの利便性で崩していく構えを見せていました。
グローバル進出と日本市場の重要性
中国国内において、WeChat Payはタクシーの配車、コンビニエンスストアでの買い物、公共料金の支払いなどに加え、オンラインショッピング(テンセントが出資する京東など)でも標準的な決済手段として定着していました。
テンセントはこの強固なユーザー基盤を武器に、中国人観光客が訪れるグローバル観光地への進出を加速させています。すでにタイ、インドネシア、シンガポールなどの東南アジア諸国で展開を始めていますが、その中でも日本は「買い物のための旅行客」の比率が特に高く、世界で最も決済ニーズが旺盛な重要市場として位置づけられています。
- 情報源: 日本経済新聞
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