中国のインターネット大手テンセント(Tencent/騰訊)が提供する「WeChat(微信)」は、単なるチャットアプリの枠を超え、驚異的なエンゲージメントを誇る巨大プラットフォームに成長しました。テンセントは1998年に深センで創業し、2004年に香港株式市場へ上場。2015年には年間売上高1,028億6,300万元(当時のレートで約2兆円)、従業員数2.5万人を擁するグローバルテックジャイアントへと躍進しました。
日本のSNSとは異なる、圧倒的な「生活密着度」
WeChatの使われ方は、日本におけるLINEやFacebook、X(旧Twitter)の利用動向と大きく異なります。
例えば、人脈の広い中国の元経営者(40代女性)にヒアリングしたところ、「数日前にWeChatで送ったメッセージを見落としてしまう」ほど、毎日大量の情報が流れ込んできます。その大部分は、知人コミュニティ(モーメンツ/朋友圈)からの個人間物販(ソーシャルコマース)や、おすすめの商品情報です。
中国の消費行動において、この身内や知人の「信頼できるクチコミ」は絶大な影響力を持ちます。実際、上海に新規オープンした日系スーパーでは、開店3週目にWeChatで「ここの惣菜は美味しい、日本人が待ち望んでいた味だ」という情報が拡散された結果、週末の売上高が前週の3倍に急増し、惣菜コーナーの全商品が完売する事態となりました。WeChatのクチコミ一つが、企業の命運を揺るがすほどの破壊力を持っています。
ネット規制の副産物と日本での広がり
中国国内ではグレートファイアウォール(金盾)によるアクセス規制により、VPNを使用しないとFacebook、LINE、YouTubeなどの主要な海外ツールが利用できません。そのため、中国ビジネスに関わる駐在員や日本国内のビジネスパートナーの間でも、連絡手段としてWeChatを導入するケースが自ずと増えています。専門知識がなくてもアプリを入れるだけで中国国内と障壁なく連絡を取れる利便性から、日本国内でのユーザー数も増加傾向にあります。
アリペイ、WeChat Pay、銀聯による決済「三国志」
WeChatが次の成長ドライバーとして注力したのが、決済サービス「WeChat Pay(微信支付)」です。
中国の決済市場は、これまで圧倒的な発行枚数を誇る「中国銀聯(UnionPay)」カードが主流でした。そこにECサイト最大手アリババ系の「アリペイ(Alipay/支付宝)」がスマホQRコード決済で急進出し、さらにテンセントがWeChat Payで猛追を開始しました。
特に、春節(旧正月)の時期にデジタルで「お年玉」を送り合う「紅包(ホンバオ)」機能は、WeChat Payのユーザー獲得と銀行口座連携を爆発的に増やし、アリペイとのシェア争いを激化させました。
| 決済手段 | 提供企業 | 主な強み・特徴 |
|---|---|---|
| 中国銀聯(UnionPay) | 中国銀聯 | デビット・クレジットカード決済の国家標準。非接触決済へ対応中 |
| アリペイ(Alipay) | アントグループ(アリババ系) | EC決済からの信頼と実績。オフライン店舗への早期導入 |
| WeChat Pay(微信支付) | テンセント | SNSの高い利用頻度を背景とした「生活インフラ」としての浸透 |
日本のインバウンド対策と将来予測
日本でもインバウンド消費を獲得するため、J・フロントリテイリングなどの百貨店グループがWeChat Payを、ローソンなどのコンビニチェーンがアリペイを試験導入する動きが相次いで報道されました。
日常の閲覧頻度やコミュニケーションとの一体化という点で、WeChat Payは決済市場においてアリペイより優位に立つ可能性があります。アリペイが「お財布」のイメージが強いのに対し、WeChatはすでに人々の「ライフスタイルそのもの」になっているからです。
情報源: ZUU
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