東京・渋谷では2016年1月9日、「WeChat(微信)」を用いた中国人訪日客向けのO2Oプロモーションイベントが開催された。指定された30秒間に、WeChatを起動したスマートフォンを振ると、公園通り商店街の対象店舗で使える商品券が当たるというものだ。結果として約1万2000人が参加し、イベント開始からわずか3時間ほどで300人以上の訪日客が引き換え会場に集まるなど、大きな盛況を見せた。
経済成長の減速が懸念されつつも、中国は世界最大の「消費者輸出国」としての地位を揺るぎないものにしている。中国旅行研究院の推計によると、2015年の中国人の海外旅行者数はのべ1億2000万人以上に達する見込みだ。また、2014年に海外旅行先で消費された総額は1648億ドル(約19兆4000億円)に達している。
訪日客の旅行目的において「買い物」は常に最上位に位置する。そのため、決済の選択肢を増やすことが、さらなる消費額アップを狙うカギとなる。日本政策投資銀行の調査によると、中国人観光客の約4割が「もし日本でもっと手軽に外貨両替ができたり、クレジットカードや普段の決済手段が使えたりすれば、支出額が増えていた」と回答している。
国内店舗で進むモバイル決済の導入
スマートフォンを用いたモバイル決済は中国国内で爆発的に拡大している。最も普及しているのは、中国の電子商取引(EC)最大手アリババグループの決済サービス「アリペイ(Alipay)」である。中国の市場調査会社iResearchの報告では、中国のネットユーザーの約9割がアリペイを利用しているとされる。
こうした中、近鉄百貨店は2016年1月14日、大阪市の「あべのハルカス近鉄本店」を含む計4店舗でアリペイを本格導入することを明らかにした。訪日客に人気の高い化粧品売り場などで対応を開始する。本店販売推進部のインバウンド担当チームが導入を進めており、チームには台湾出身のスタッフも在籍している。
また、近鉄百貨店の高松啓二社長は、テンセントが提供するSNSアプリ「WeChat(微信)」の決済サービス「WeChat Pay」の導入も検討する考えを示した。WeChatは中国版LINEとも言えるインフラアプリで、すでに大丸松坂屋百貨店などが決済手段として先行採用している。
アリペイには、スマートフォンの位置情報(GPS)をもとに近くの加盟店を紹介したり、お得なクーポンを配信したりする機能がある。また、中国で人気のSNS「微博(Weibo)」とも連携し、口コミを活用したプロモーションが可能だ。近鉄百貨店のほか、ビックカメラやパルコなど大手小売・商業施設も導入を競い合っている。
ライバルであるアジア各国とのインバウンド対応の差
一方で、日本のインバウンド決済環境にはまだ多くの改善余地がある。例えば、中国人のほぼ全員が保有しているとされる「銀聯(UnionPay)カード」について、日本国内で利用できるATMの割合は約50%、加盟店数は約40万店にとどまっている(当時)。
観光地としてライバルとなる近隣諸国と比べると、その差は歴然だ。韓国では、ほぼ全ての店舗で銀聯カードが利用可能であるだけでなく、現地の交通系ICカードである「Tマネー」との連携も実現している。シンガポールでは全てのATMと約70%以上の小売店、オーストラリアでも80%以上のATMと約50%近くの小売店で銀聯カードが利用可能となっており、日本は決済インフラの整備において後塵を拝しているのが現状だ。
情報源:AdverTimes
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