日本を訪れる外国人観光客の急増を受け、ネット・IT関連各社によるインバウンド対策ビジネスが活発化している。翻訳クラウドソーシングを提供するGengoは、訪日客による多言語サイト閲覧の増加などを背景に業績を伸ばしている。決済分野では、米PayPal(ペイパル)が日本のEC事業者向けに中国市場進出を支援するプログラムを開始。一方、リクルートグループは中国モバイル決済の最大手「Alipay(アリペイ)」を国内のリアル小売店や飲食店へ導入展開する。押し寄せるインバウンド需要をどのように獲得するのか、各社の決済インフラ戦略を追う。
日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2014年の訪日外国人観光客数は1,341万人に達した。2011年の620万人から4年連続で急増しており、2015年には2,000万人の大台を突破する可能性も現実味を帯びている。その市場拡大を牽引しているのが中国人観光客である。観光目的で来日する中国人は2014年時点で約175万人であり、前年比で約150%増という爆発的な成長率を記録している。
PayPal:旅先での「爆買い」を帰国後の「越境EC」へ繋ぐ
米PayPalは2015年10月21日より、日本のEC加盟店を対象に、中国消費者向け越境ECをワンストップで支援する事業を開始する。同社のデジタルウォレット「PayPal」において、すでに2010年から対応している「銀聯(UnionPay)」での決済手段を改めて中国国内の消費者にアピール。日本のPayPal導入店舗での売上拡大を支援するとともに、旅先での「爆買い」効果を帰国後のリピート購入や買い忘れ需要に繋げるインバウンド越境ECスキームを構築する狙いだ。
このプログラム名は「ペイパル・チャイナ・コネクト(PayPal China Connect)」。すでに米国、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、シンガポールなどで先行実施されており、銀聯国際(UnionPay International)のほか、中国建設銀行、平安銀行、中国本土で絶大な影響力を持つショッピング口コミコミュニティ「値得買(SMZDM)」などの強力な現地パートナーと連携し、中国の消費者に向けて日本のEC加盟店ブランドをプロモーションする。
日本での初期参加企業には、ニッセンホールディングスやコスメ・コムなど、すでにPayPal決済を導入している大手EC事業者15社が名を連ねる。PayPalは年末までに計4回の購入促進キャンペーンを実施し、その後も継続的に同越境EC支援を展開していく。PayPalは現在、世界203カ国・地域で1億6,900万人以上のアクティブユーザーを抱える世界的な金融インフラである。
リクルート:Airレジ連携とグルメ情報掲載でリアル店舗をカバー
リアル店舗領域では、リクルートライフスタイルが2015年9月29日、決済代行大手のベリトランスおよび中国アリババ系の「Alipay(支付宝)」との提携を発表した。年内を目標に、同社が提供する無料スマートPOSレジアプリ「Airレジ」を導入する加盟店舗に向けて、Alipayでの対面コード決済サービスの提供を開始する。
これにより、Alipayアプリを利用する中国人観光客は、会計時にスマートフォンのQRコードを提示するだけでスピーディーに決済を終えられる。まずはビックカメラやパルコといった大手商業施設から試験的に導入が開始される。
さらに同社は、インバウンド集客の強化に向け、自社が運営する飲食店予約サイト「ホットペッパー グルメ」に掲載されている主要都市(東京・大阪・京都)の飲食店情報を、Alipayのアプリ内にある旅行・周辺店舗紹介ページへと提供する連携を開始。飲食店の情報収集から店頭決済までを一気通貫でカバーすることで、訪日客による消費行動を店舗へと誘導する。
インバウンド決済インフラの覇権争い
銀聯カードやAlipayなど、中国国内の生活者が日常的に利用している決済システムを整備することは、インバウンド需要を取り込む上で不可欠な要件となっている。今後はこれらリアル店舗やECサイトへの決済システム構築だけでなく、整備された決済手段をベースにどのように海外の消費者を自店へ誘客(マーケティング)できるかが、成否を分ける鍵となりそうだ。
(情報源:日経コンピュータ)
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