はじめに
2025年、米国のGoogleと中国の阿里巴巴(Alibaba)がAI分野への大規模な投資と技術的ブレークスルーにより株価を大きく伸ばし、世界の投資家の注目を集めている。両社はそれぞれの本国市場でAIを事業の中核に据えるドラスティックな戦略転換を行い、過去半年で株価が急上昇した。
GoogleのAI戦略と株価上昇
バロンズ・チャイナが2025年11月までに実施した投資品種の上昇率ランキングによれば、米国のテクノロジー7大巨頭(Magnificent 7)の中で直近最も高い伸びを示したのはGoogleである。半年前、Googleは「AI出遅れ」「検索ビジネスの陳腐化リスク」「旧態依然とした官僚組織」などと評され、時価総額の評価が7大巨頭の中で最も低い状態に沈んでいた。
しかし、同社は2025年8月にオンデバイス画像生成AI「Nano Banana」を発表し、スマートフォンのAI画像編集分野でイノベーションを先導した。続く9月には米国政府との司法省反トラスト訴訟に一定の区切りがつき、自社サービスにAI技術を深く統合する法的リスクが低減した。さらに11月にリリースされた次世代の「Gemini 3」大規模言語モデルは、ChatGPTの最新モデルに匹敵、あるいは一部上回る高いベンチマークを記録し、市場の懐疑論を払拭した。
これに伴い、著名投資家のウォーレン・バフェットがGoogle株を取得したとする市場観測も手伝い、同社の時価総額は2025年11月時点で3兆米ドル(約450兆円)を突破した。わずか半年で「AI不振株」から「AIの最有力受益株」へと投資家の認識を転換させた稀有な事例である。
アリババのAI再起と市場シェア回復
一方の中国市場でも、アリババはAIへの集中的な資源投入によって劇的な復活劇を見せた。2025年11月時点での年初来の株価上昇率は82%に達し、過去4年間に及ぶ長期的な株価低迷を一気に脱した。
2020年に約8,600億米ドル(約130兆円)でピークに達したアリババの時価総額は、中国政府のプラットフォーム規制や競合(拼多多=Pinduoduoなど)の追い上げにより、2024年には1,800億米ドル(約27兆円)にまで減少、全盛期の約5分の1にまで沈んでいた。時価総額では米Amazonと約7倍もの大差をつけられていた。
2025年に入ると、アリババはクラウド部門(Alibaba Cloud)におけるAIコンピューティング需要の爆発的な成長で再起の狼煙を上げた。その後、今後3年間で総額3,800億元(約8兆円、約530億米ドル)に達するAIインフラおよびモデル構築への巨大投資計画を公表した。年末にリリースされた一般ユーザー向けの対話型AI「通義千問(Qwen)App」は、AI-to-C(消費者向けAI)領域における「スーパーアプリ」としての立ち位置を確立しつつある。
さらに、創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が2025年9月に杭州のアリババキャンパスに姿を現したことが報じられると、翌日の株価は5%以上急騰した。創業者の復帰姿勢が市場に与える強い安心感を如実に示す事例となった。
創業者の再登場がもたらした組織改革
Googleにおいては、共同創業者のセルゲイ・ブリン(Sergey Brin)氏がAI分野の急激な変化に触発されて社内開発に本格復帰したことが大きな転機となった。ブリン氏は、社内に散在し権力闘争の温床となっていた旧Google Brain(マウンテンビュー)とDeepMind(ロンドン)の統合を強力にサポートし、「Google DeepMind」として統一した。また、かつて大規模モデルの基盤技術である「Transformer」を開発しながら離職の危機にあった一線級のAI研究者に対し、給与体系を例外的に見直して破格のオファーで引き留め、技術の流出を防いだ。
アリババにおいても同様に、創業者の馬雲氏が「高規格民営企業座談会」に出席したことが事実上の復帰シグナルとなった。同氏はAIインフラへの3,800億元の巨額投資を推進するとともに、自社モデルである「通義千問」の開発進捗を日次で報告させる体制を作った。さらに、AI生活サービスやO2O分野に500億元(約1兆円)規模の補助金を投じる意思決定を行った。組織面では、パートナーシップ制度を支える26人の合伙人(パートナー)チームを17人に精鋭化し、意思決定のスピードを劇的に向上させた。
このように、創業者の持つ絶大な影響力とビジョンが組織の縦割りを排し、巨額のAI投資への迅速な経営判断をもたらした点は、両社の復活劇における決定的な要因であった。
AI投資のリスクと今後の展望
しかし、AIへの巨額投資は必ずしも将来の収益を保証するものではない。Googleの経営を率いるサンダー・ピチャイCEOは年俸2.5億ドル(約375億円)を受け取るプロ経営者であり、創業者ブリン氏の積極姿勢と株主利益の最大化というバランスを取る重圧に晒されている。
一方のアリババは、中国国内のクラウド(IaaS)市場が依然として激しい低価格競争にあり、米国のAWSやAzureに比べてAIによる利益率向上が難しく、投資の回収期間が長期化する懸念が指摘されている。
さらに、AI用半導体(GPUなど)のグローバルな供給網が不透明ななか、両社は独自のカスタムAIアクセラレータ(GoogleのTPU、アリババの自社開発ASICなど)の設計と量産を急いでいる。これには天文学的な開発費と、高度な専門人材の確保が不可欠であり、世界規模の技術覇権争いは今後も激化する。
とはいえ、AIがデジタル社会のあらゆるインフラを再定義するというコンセンサスは揺るがない。Googleとアリババが見せた「不死鳥のような復活」は、大企業病に陥ったテックジャイアントであっても、明確なリーダーシップと資本の集中投下があれば、破壊的なイノベーションの波を乗り切ることができるという重要な教訓を示している。
出典: 钛媒体
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