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    百度の次世代AIチップ「昆仑芯」と2028年千基ノード計画

    百度(Baidu)が発表した次世代AIプロセッサ「昆仑芯」M100およびM300と、2028年に向けた「天池」千基規模超ノードのロードマップを徹底解説。大規模言語モデル(LLM)の推論・学習コストを極限まで抑える設計思想や、中国国内におけるAIインフラ自給率向上への影響について分析します。

    百度が発表した次世代AIプロセッサ「昆仑芯」M100・M300とロードマップのイメージ
    百度が発表した次世代AIプロセッサ「昆仑芯」M100・M300とロードマップのイメージ
    百度が発表した次世代AIプロセッサ「昆仑芯」M100/M300とロードマップ

    2025年11月13日に開催された年次カンファレンス「百度世界大会(Baidu World)」において、百度の半導体子会社である昆仑芯科技(Kunlunxin Technology)は、次世代AIプロセッサ「昆仑芯(Kunlunxin)」M100およびM300を正式発表しました。さらに、2028年までに1,000基クラスのアクセラレータを相互接続する「千基規模超ノード(スーパーノード)」を商用化する長期ロードマップも提示されました。

    本稿では、今回発表されたチップの特徴と展開時期、システム全体の性能を引き上げる「天池(Tianchi)」スーパーノード計画、そして中国のAIインフラ自給率向上と国際市場への影響について、日本市場との比較を交えて詳しく解説します。

    昆仑芯 M100:MoEモデルの推論処理に特化した高コスパチップ

    2026年初頭に市場投入される「昆仑芯 M100」は、大規模モデルの「推論」処理に特化した専用プロセッサです。最大の特徴は、混合専門家(MoE: Mixture-of-Experts)技術を用いた大規模言語モデル(LLM)の実行に最適化されている点です。

    設計コンセプトは「圧倒的な費用対効果(コストパフォーマンス)」であり、百度の検索、広告、クラウドサービスにおける運用コスト削減だけでなく、急成長するAIスタートアップやエンタープライズの推論コスト削減に大きく寄与することを目指しています。MoEは必要なパラメータのみを動的に活性化させて推論を高速化する手法ですが、M100はこのデータ転送とメモリ帯域の処理能力を強化することで、実用性能を高めています。

    昆仑芯 M300:数千億パラメータのマルチモーダル学習を支える極致性能

    2027年初頭のリリースを予定している「昆仑芯 M300」は、より高度な「学習(トレーニング)」および超大規模な「マルチモーダルモデル」の推論を想定したフラッグシッププロセッサです。

    M300の設計は「極致性能」を追求しており、画像、テキスト、音声をシームレスに処理するマルチモーダルAIの学習プロセスを高速化するため、内部のデータフローおよびメモリ階層が再設計されました。これにより、百度の自社LLM「文心一言 (Ernie)」シリーズの進化を加速させるだけでなく、自動運転や高度なパーソナルアシスタントなどの最先端エージェント技術の基盤としても活用される見込みです。

    「天池(Tianchi)」スーパーノードのロードマップ

    単一の半導体性能の向上にとどまらず、百度はこれらを連結してシステム全体を最適化する「スーパーノード(超ノード)」戦略に重点を置いています。

    その中核となるのが「天池(Tianchi)」スーパーノードです。2026年上半期には「天池 256 スーパーノード」、下半期には「天池 512 スーパーノード」が市場に投入される予定です。512スーパーノードでは最大512基のプロセッサを相互接続し、カード間のインターコネクト総帯域幅を従来の2倍に向上させます。

    この帯域幅の大幅な強化により、従来は複数ノード間で発生していた通信ボトルネックが解消され、単一のスーパーノードで1兆(万億)パラメータ規模の大規模モデルのトレーニングが可能になると公表されています。

    百万基クラスを見据えた長期AIインフラ戦略

    百度が示した今後5年間のAIインフラに関するロードマップは、ハードウェアからソフトウェア、サービスまでを一気通貫でカバーする巨大なエコシステムの構築を目指しています。

    • 2028年:1,000基以上のプロセッサを単一クラスターとして統合する「千基規模超ノード」の商用化。
    • 2029年:エッジデバイスからデータセンターまで幅広くカバーする、次世代の省電力・高性能チップ「昆仑芯 N系列」の展開。
    • 2030年:AIクラスター管理プラットフォーム「百度百舸 (Baige)」プロジェクトを通じて、100万基規模の単一超大型クラスターを実現。

    この超巨大なインフラ基盤は、学術研究や産業向けの超大規模AIモデルの実験・実用化において圧倒的なアドバンテージとなることが期待されています。

    中国AI市場における立ち位置と国際的な課題

    百度の半導体開発は、中国政府が推進する新型インフラ建設(新基建)計画や半導体の自給率向上目標と密接に関連しています。米国の輸出規制(NVIDIAの最先端GPUの供給制限など)に直面する中、独自のAIプロセッサを設計・供給できる体制を確立することは、中国テック企業にとって死活問題です。

    特筆すべきは、昆仑芯科技が単なる百度の社内用サプライヤーから「商業ベンダー」へと変貌を遂げている点です。すでに売上の50%以上が外部クライアント(クラウド事業者や一般企業)からとなっており、香港証券取引所(HKEX)への新規公開株(IPO)準備を進め、評価額は500億ドル(約7.5兆円)規模に達するとの見方もあります。

    しかし、TSMCなどの先端ファウンドリ(受託製造企業)への製造依存といったサプライチェーンのリスクは依然として残っており、地政学的リスクをどのように回避しながら量産体制を維持するかが、今後の成長を大きく左右するでしょう。

    まとめと日本市場への示唆

    百度が提示した「昆仑芯」M100/M300と「天池」スーパーノード計画は、中国のAIハードウェアおよびインフラが独自の進化を遂げつつある現状を示しています。

    日本市場においては、国産AIチップの開発や大規模計算基盤の確保が急務とされていますが、百度のように「チップ設計からクラスター管理、大規模モデル(LLM)開発まで」を一貫して自社で最適化する垂直統合モデルは、非常に強力なケーススタディとなります。今後、日本企業がグローバル展開を目指す上で、低コストかつ高性能な代替AIインフラとして中国製チップの動向やその商業化のスピードを注視しておくことは、技術ポートフォリオの観点からも極めて重要になるでしょう。

    出典: IT之家 (ITHome)

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