
富士康(正式名称:鴻海精密工業)は、2024年7〜9月期の決算で、AIサーバー事業の急速な伸長に支えられ、売上高が前年同期比11%増の2.06兆台湾ドル(約9.5兆円)、純利益は17%増の576.7億台湾ドル(約2,650億円)と、市場予想を上回る好業績を発表した。
同社は従来のiPhoneなどのスマートデバイス受託製造からシフトし、米国の大手テック企業向けAIサーバーの受注拡大を通じて、AIサーバー・クラウド・ネットワーク事業が全体売上の42%を占めるまでに成長した。
業績ハイライトとAIサーバーの比重
2024年第三四半期(2024年7月〜9月)における富士康の総売上高は2.06兆台湾ドル(約9.5兆円)で、前年同期の1.85兆台湾ドルに対し11%の増加となった。純利益は576.7億台湾ドル(約2,650億円)で、前年同期の492.5億台湾ドルに比べて17%上回った。
同社のAIサーバー・クラウド・ネットワーク部門は、売上高ベースで全体の42%を占め、前四半期に初めてスマート消費電子部門(主にiPhone等の受託製造)を抜いて最大の事業となった。9月末時点で同社のAIサーバー製品の累計売上は1兆台湾ドル(約4.6兆円)を突破し、製造・組立技術のイノベーションが出荷量増に直結している。
AIサーバー事業の拡大戦略
富士康は、米国のAmazon(AWS)やNVIDIAといったAIインフラ需要を牽引する大手顧客向けに、ラック型AIサーバーの設計・組立を受託している。これにより、従来のスマートフォン中心のサプライチェーンから、AI半導体・ハードウェアやデータセンター向けインフラへと事業ポートフォリオを多様化させ、高付加価値化に成功した。
同社は2024年10月、AI計算クラスターとスーパーコンピュータセンターの構築を目的とした設備投資計画を発表し、取締役会の承認を得た投資総額は420億台湾ドル(約1,930億円)に上る。この投資は、AIサーバーの製造ライン自動化や液冷・高密度冷却技術の導入を含み、将来的な出荷拡大の基盤となる。
米国拠点での生産拡大
富士康はテキサス州とウィスコンシン州に新たなAIサーバー工場の建設計画を進めている。テキサス州の施設は2025年中に本格稼働を開始し、年間最大10万台のラックサーバー生産能力を備える予定だ。ウィスコンシン州では、既存の製造拠点を拡張し、最新のAI向けGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)搭載サーバーの組立ラインを追加することで、米国内のデータセンター需要に迅速に対応できる体制を整える。
市場環境と投資家の反応
AIブームに伴う半導体・サーバー需要の急伸は、サプライチェーン全体に波及効果をもたらしている。特に、AIチップメーカーやクラウドプロバイダーが数十億ドル規模の投資を行う中で、富士康のような受託製造企業(EMS)は受注増加の恩恵をダイレクトに受けている。
株式市場でも評価が高まり、2024年10月下旬には台湾市場において同社の株価が過去最高値を更新し、年初からの上昇率は35%以上に達した。株価上昇の一因として、富士康会長の劉揚偉氏がOpenAI CEOのサム・アルトマン氏と面会し、将来的な協業可能性やAIハードウェア供給について議論したことが投資家に好感された。
今後の見通しと課題
富士康は2025年3月期までにAIサーバー事業の売上比率を50%以上に引き上げる目標を掲げている。これに向けて、製造プロセスのロボットによる自動化、サプライチェーンの地政学的リスクを考慮した多元化、そして米国・メキシコ拠点でのローカル生産拡大が鍵となる。
一方で、米中技術摩擦や半導体供給の不安定さはリスク要因として残る。特に、最先端AIチップの供給が制限された場合、サーバー組立のリードタイムが延びる可能性があるため、富士康は代替供給元の確保や在庫戦略の最適化を進めている。
総じて、富士康はAIサーバーという高付加価値領域へのシフトに成功し、従来のスマートフォン受託依存から脱却しつつある。今後の持続的な成長は、北米市場での受注拡大と、進化するAIインフラ技術(液冷など)にどれだけ迅速に対応できるかにかかっている。
出典: IT之家
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