Redmi K90の価格改定とその背景
シャオミ(Xiaomi)のハイコスパ系サブブランド「Redmi」が2025年10月に発表した主力スマートフォン「K90」シリーズは、性能に対する圧倒的な安さで期待を集めていたモデルです。しかし、ふたを開けてみると標準モデルの価格が一斉に値上がりし、中国のSNSなどで大きな議論を呼びました。
具体的には、前世代モデルに比べて256GBモデルで100元〜200元(約2,000円〜4,000円)、512GBモデルで300元(約6,000円)、1TBモデルにいたっては400元(約8,000円)の上乗せとなり、価格感度の高い若者層やガジェットファンにとっては予想外の負担増となりました。
同時期に登場したAppleの「iPhone 17」シリーズが実質的な価格据え置きで販売されたのとは対照的であったため、ファンからは不満の声が上がりました。これに対し、シャオミグループ総裁の盧偉冰(ルー・ウェイビン)氏は自身のWeibo(微博)アカウントで、「上流工程での半導体コスト、特にストレージ用メモリカードの調達コスト上昇が予想をはるかに超えている」と釈明。コスト高騰を吸収しきれず、値上げに踏み切らざるを得なかった業界の窮状を明かしました。
メモリ価格の急騰が波及する業界全体
このメモリコストの高騰は、Redmi単体の問題ではありません。2025年後半以降に発売されたほとんどのスマートフォン新機種で、ストレージ容量の大きい上位グレードほど価格上昇が顕著になっています。
さらに、スマートフォンだけでなくPC市場にも同様の波が押し寄せています。自作PCユーザーの間では、DDR5規格の16GBメモリモジュールの小売価格が、一時399元(約8,000円)から529元(約10,600円)へとわずか数日のうちに約33%も高騰するなど、部品単体での値上がりがリアルタイムで発生しています。
供給不足の根本原因:AI・クラウドサーバー需要の急増
この世界的なメモリ不足と価格高騰を引き起こしている根本的な要因は、コンシューマー向け製品の需要増ではなく、巨大IT企業による「AIデータセンター」への過剰な投資にあります。
台湾のメモリ大手ADATA(威剛科技)の董事長である陳立白(Simon Chen)氏は、同社の主要製品ラインであるDDR4、DDR5、NANDフラッシュ、およびHDDが同時に在庫不足に陥り、供給制限を行っていることを公表しました。
これまでの半導体不足はモジュールベンダーによる投機的な買い占めや供給遅延が原因であることが多かったのに対し、今回は資金力のある米中のクラウドプロバイダー(Amazon、Microsoft、Alibaba、Tencent、Baiduなど)や、OpenAIといった生成AI開発の巨頭たちが、AIサーバー用の高速DRAMやHBM(高帯域メモリ)を最優先で大量買い占めしているためです。これにより、SamsungやSK hynix、Micronといった主要半導体メモリーメーカーの製造ラインがサーバー向けに占有され、スマホや一般PC向けの通常メモリの供給量が急激に押し下げられています。
主要半導体メーカーの動向と価格予測
韓国のSK hynixは決算発表で、「来期分のすべてのストレージ製品はすでに完売(受注済み)状態である」と述べ、半導体事業の利益が前年比で爆発的に増加したことを明らかにしました。
半導体アナリストは、DRAM全体の需要は翌年も最低20%以上、NANDフラッシュ需要も10%以上成長すると予測しています。また、SamsungとSK hynixは増産を急ぐ一方で、第4四半期にメモリチップ単価を最大30%引き上げる計画を示しており、一般ユーザー向けの製品価格が近いうちに下落に転じる兆しは見えません。
OpenAIやMicrosoftが進める1,000億ドル(約15兆円)規模とも噂される次世代AIスーパーコンピューター構築計画「Stargate(スターゲート)」に代表されるように、AIインフラへの投資は今後数年間にわたり衰えることはありません。このため、半導体メーカー各社は利益率の極めて高いAI専用メモリの生産を最優先し、スマホ用のLPDDRやPC用のDDRメモリの生産能力がさらに制限されるという悪循環が懸念されています。
今後スマートフォン市場はどうなるのか?
最も打撃を受けるのは、価格制限の厳しいミドルレンジからエントリークラスのスマートフォンです。メモリやストレージの調達価格が上がり、代替サプライヤーも見つからない場合、メーカーは端末全体の価格を上げるか、ディスプレイやカメラの品質を削って帳尻を合わせるしかありません。
さらに、Appleの次期SoC(3nmまたは2nmプロセス採用)の製造コスト上昇や、オンデバイスAI(端末側でAI処理を行う仕組み)の実装に必要なメモリ容量の増大(次世代iPhoneで最低12GB以上のRAMが標準搭載されるとの予測など)も重なり、今後のスマートフォン業界全体の平均単価(ASP)は一段と切り上がることが必至とみられています。
まとめ
これまで中国の「双十一(独身の日)」などの大規模セールは、メモリやストレージを安く買い増す絶好のチャンスとされてきましたが、今回のAIバブルに伴う供給逼迫期においては「安くなるのを待つ」という従来の購入戦略は通用しなくなっています。
AIやデータセンター需要が今後数年間拡大し続ける中、スマホやPCのパーツ価格は「容量ベースでの高止まり」がデフォルト(新たな日常)となる可能性が高いと言えます。消費者はこの新しいコスト構造を前提に、長期的なガジェットの買い替え計画を立てる必要があるでしょう。
出典: ifanr
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