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    Ant Group、1兆パラメータLLM「Ling-1T」を公開

    アリババ傘下のアントグループ(Ant Group)は、パラメータ数1兆を超えるオープンソース大規模言語モデル(LLM)「Ling-1T」を公開した。少ないトークン消費で高い数学的・論理的推論力を示し、Google DeepMindのGemini-2.5-Proに肉薄する性能を誇る本モデルの技術と背景を解説する。

    Ant Group、1兆パラメータLLM「Ling-1T」を公開

    モデル概要とリリース背景

    アリババグループの金融テクノロジー関連会社であるAnt Group(アントグループ:旧・蟻金服)は、独自開発の大規模言語モデル(LLM)シリーズ「Ling(百霊) 2.0」の第一弾となるフラッグシップモデル「Ling-1T(Ling One Trillion)」を正式公開しました。

    Ling-1Tは、パラメータ数が1兆(1trillion)を超える、同社史上最大かつ最高性能を誇るモデルです。OpenAIの「o1」シリーズのような思考プロセス(推論中の強化学習による長文思考)を出力しない、従来の高速・非思考型モデル(Non-thinking Model)として位置付けられています。

    同時に、モデル本体と関連コードはHugging Face、ModelScope(魔搭社区)、GitHub上にオープンソースとして公開され、世界中の開発者が無償でダウンロードおよび統合利用できる環境が整えられました。中国国内向けのチャット対話デモは「ling.tbox.cn」、グローバル開発者向けのAPIと対話体験は「zenmux.ai」にて提供されています。

    ベンチマーク結果と他社競合との比較

    リリース直後に実施された独立評価において、Ling-1Tは「制限されたトークン出力」条件下での高度な推論ベンチマークで世界最高水準(SOTA:State-of-the-Art)を記録しました。特に注目を浴びたのは、難関数学コンテスト「AIME 25(American Invitational Mathematics Examination 25)」における性能です。

    評価によると、Ling-1Tは回答あたり平均4,000トークンを消費して正答率70.42%を達成しました。これに対し、Google DeepMindの最新モデルである「Gemini-2.5-Pro」は平均5,000トークンで正答率70.10%にとどまっており、Ling-1Tが約20%少ないトークン消費(=低コスト)でありながら、精度でわずかに上回る結果を示しています。このほか、コード生成や競技プログラミング、論理推論などの多様な開発タスクでも、オープンソースLLMとして世界トップクラスの評価を受けています。

    技術的特徴と今後の改善課題

    Ling-1Tは、ONVOシリーズなどでも見られるGQA(Grouped Query Attention)ベースのAttentionアーキテクチャを採用し、20テラトークン(20兆トークン)以上の高品質な多言語データを用いて事前学習が行われました。コンテキストウィンドウは最大128Kトークンをサポートし、長文ドキュメントの理解と生成に強みを持っています。

    さらに、進化型思考チェーン(Evo-CoT:Evolutionary Chain of Thought)と呼ばれる学習・調整手法を導入することで、推論の精度と実行効率を飛躍的に向上させました。これにより、APIや関数の呼び出し能力を競う「BFCL V3」ベンチマークにおいて、事前のデモ用データ(軌跡データ)の付与なしに、わずかなファインチューニングのみで約70%の関数呼び出し成功率を実現しています。

    一方で、開発チームは以下のような課題も認めています。

    1. 推論コストの最適化:GQAを採用しているものの、1兆パラメータモデルの実行には膨大な計算資源が必要です。今後はハイブリッドAttention(混合アテンション)を導入し、訓練および推論時の効率をさらに高める予定です。
    2. AIエージェントとしての機能拡張:現状では、長期記憶や複雑なツールを自律的に使いこなすマルチターン対話(複数回の対話)機能に改善の余地があります。
    3. 指示遵守とアイデンティティ整合:特定の対話コンテキストにおいて役割設定(ロールプレイ)に混乱が生じるケースがあり、これを強化型の整合チューニングによって修正していく計画です。

    オープンソースURLとアクセス方法

    Ling-1Tのオープンソースリポジトリは以下のリンクからアクセス可能です。

    対話インターフェース:

    中国AIエコシステムにおける位置付けと展望

    Ant Groupが発表した最新データによると、同社の研究開発投資は2024年に234.5億元(約4,700億円)と過去最高額に達しました。また、同社が運営する世界最大の決済プラットフォーム「Alipay(支付宝)」では、すでに1.3億人を超えるユーザーが日常的に同社提供のAI機能を利用していると報告されています。

    Ling-1Tのリリースは、米テック大手が主導する超巨大LLM市場に対し、中国の民間メガテック企業がオープンソースを通じて対抗する強力な一手となります。日本市場やグローバルな開発コミュニティにおいても、高性能な1兆パラメータモデルが無償でカスタマイズ可能になったことは、AIのローカライズや各業界での応用を加速させる起爆剤となるでしょう。

    出典: IT之家

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