
ONVO L90 の販売実績と市場の反応
2025年10月25日、NIO(蔚来汽車)はファミリー向け新ブランド「ONVO(楽道)」の大型電気SUV「L90」の累計納車台数が、発売開始からわずか86日間で3万台を突破したと公式発表しました。8月1日にデリバリーが開始された同モデルは、9月単月で10,997台を販売。競合がひしめく大型SUV市場において、月間販売台数1万台を超える「大ヒットモデル」となっています。
大型SUV市場における「BEV(バッテリー電気自動車)」の壁
中国のファミリー向け大型SUV市場では、家族での長距離旅行や荷物を満載した状態での走行ニーズが高いため、燃料補給が容易な「ハイブリッド車(HEV)」や「航続距離延長型EV(EREV:レンジエクステンダー)」が主流を占めてきました。
従来のBEV(ピュアEV)は、最新の800V超急速充電技術を搭載したとしても、サービスエリアなどの充電ステーションの混雑や「目的地で充電できるか」という心理的不安(レンジアンクシャイティ)が根強く、購入を躊躇するファミリー層が多く存在していました。
「バッテリー交換」+「BaaS」という破壊的ソリューション
ONVO L90がBEVでありながら急成長を遂げている理由は、NIOグループの強みである「バッテリースワップ(バッテリー交換方式)」と、バッテリーサブスクリプション「BaaS(Battery as a Service)」の組み合わせにあります。
バッテリースワップは、NIOが中国全土の高速道路などに整備したステーションを利用し、わずか約3分で満充電のバッテリーへと自動交換できるサービスです。これにより、BEV最大の弱点であった充電待ちの時間を事実上ゼロにし、ガソリン車と同等の機動性を実現しています。
さらに、BaaSプランを活用することで、車両本体価格からバッテリー代金である約8.6万元(約172万円)を差し引いた金額で購入できます。初期購入コストが大幅に抑えられることで、競合となる理想汽車(Li Auto)の「L6」やその他のEREVモデルと直接競合できる戦略的な価格設定(約360万円〜)が可能になりました。また、バッテリー自体の劣化や技術進化による残価リスクをオーナー自身が負わなくて済むことも、ファミリー層の支持を集める要因となっています。
中国大型SUV市場におけるパワートレイン別実績比較
2025年9月における中国市場の大型SUV販売台数上位モデルの構成を見ると、BEVのみで上位に食い込んでいるONVO L90の異質さが際立ちます。
- AITO(問界)M8:21,244台(BEV / EREV合算。うち約90%がEREV)
- ONVO(楽道)L90:10,997台(BEVのみ)
- AITO(問界)M9:10,503台(BEV / EREV合算。うち約80%がEREV)
- Lynk & Co(領克)09 EM-P:7,319台(PHEV / EREV)
- Li Auto(理想汽車)L9:3,787台(EREVのみ)
- NIO(蔚来)ES8:2,803台(BEVのみ)
ファーウェイがスマートカー技術を共同開発するAITOの「M8」や「M9」は高い販売台数を誇りますが、その大半は発電用エンジンを搭載したEREV(増程)モデルです。純粋なBEV単体として大型SUV市場で月間1万台を突破しているのは、現在ONVO L90だけです。
新たなトレンド:純電プラットフォームによる「EREV 2.0」への進化
BEVのインフラ課題が残る中で、レンジエクステンダー(EREV)市場もまた次のステージ「EREV 2.0」へと進化しています。従来のEREVは、既存のガソリン車用プラットフォームにエンジンとバッテリーを詰め込む設計が多く、室内空間や乗り心地が犠牲になりがちでした。
しかし、現在各社は「BEV専用プラットフォーム」をベースにEREVシステムを統合するアプローチを導入し始めています。例えば小鵬汽車(XPENG)は、BEV専用設計による低重心やフラットフロア、後輪操舵(アクティブリアステアリング)などの優れた走行性能を維持しつつ、小型・高効率化した発電用エンジンを配置した新型ファミリーミニバンを発表しました。
これにより、消費者は「BEVならではの快適な乗り心地・広い室内空間」と「ガソリン給油による無制限の航続距離」を両立した、洗練された「EREV 2.0」車を選択できるようになっています。
今後の展望とまとめ
ONVO L90の販売記録は、バッテリースワップという強力なインフラと初期コストを下げるBaaSというビジネスモデルが結びつくことで、大型ファミリーカー市場でもBEVが十分に通用することを証明しました。
短期的にはガソリン併用が可能なEREVが市場の主流であり続けると予想されますが、NIOグループがバッテリースワップのオープン化(他社への提供)を進める中、BEVの利便性が向上すれば市場の力学は一気に変わる可能性があります。自動車メーカー各社にとって、BEVとしての先進性とEREVとしての実用性のどちらが日本の読者やグローバル市場に適しているか、今後のインフラ整備の動向とともに注視していく必要があります。
出典: ifanr
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