上海で開幕した世界AI大会(WAIC)に見る具身知能(エンボディドAI)の地殻変動
米テスラの「Optimus」を筆頭に、グローバルで人型ロボット(ヒューマノイド)の開発競争が激化しています。その中で、ロボットの物理的な「身体」を制御するだけではなく、高度な判断力を与える「脳」としてのAI技術が急激な進化を遂げています。
上海で開催された「世界AI大会(WAIC)」では、現実世界をシミュレーションし、次に何が起こるかを高精度に推測・予測する「世界モデル(World Model)」関連の重要プロダクトが相次いで公開されました。
本記事では、ロボティクスとAIが融合する「具身知能(エンボディドAI)」セクターにおける中国スタートアップおよびテック大手の最新動向と、日常生活に溶け込むAIデバイスの最前線をお届けします。
1. ロボットの「脳」を進化させる「世界モデル」のオープンソース化
世界モデルは、人型ロボットが現実世界を「見て、理解し、行動する」ための中核知能です。AIモデルがリアルタイムで周囲の物理法則をエミュレートし、次にどのような手の動きや足のステップが必要かを先読み・自己修正しながら動作します。
- 智元ロボット(Agibot)の挑戦: 元ファーウェイの若き天才開発者が創業したことでも知られ、業界をリードするロボットベンチャーの智元ロボットは、世界モデルのオープンソースプラットフォーム「Genie Envisioner」を発表。同社は開発環境や重みデータをオープンソース化することで、世界中の開発者が低コストで人型ロボットの知能を最適化できるエコシステムづくりを狙います。
- 商湯科技(SenseTime)の具身知能プラットフォーム「悟能」: 画像認識からLLMまでをカバーするテック大手の商湯科技も、具身知能(エンボディドAI)専用プラットフォーム「悟能」を発表。自社のマルチモーダルな大規模言語モデル技術を活用し、工場でのピッキング作業や危険環境下での自律型ロボット運用をスマートに制御するソリューションをアピールしました。
2. ソフトウェア開発の自動化と、AIスマートグラス「Halliday」の衝撃
AIの実用化の波は、ロボットの筐体の中だけではなく、開発プロセスや私たちの身体のインタラクションにも直接及んでいます。
- AIによるコード生成の劇的な進化: 四足歩行ロボットのグローバルパイオニアである**宇樹科技(Unitree Robotics)**の創業者(王興興氏)は、最新のプログラミング用AIエージェントの適用により、開発時におけるAIのコード生成成功率が部分的に90%を超えているという現状を共有。エンジニアの労働集約的なコーディング作業をAIが肩代わりし、ハードウェア設計や高次元のアルゴリズム構築に人間が集中できる環境が整っていることを指摘しました。
- 日常に溶け込むAIメガネ「Halliday」: WAICで展示された新型スマートグラス「Halliday」は、わずか28.5グラムという、一般的な眼鏡とほとんど変わらない超軽量ボディを実現。度付きの処方箋レンズをそのまま装着できる日常使い仕様でありながら、AIエージェントと接続。ユーザーの視線認識技術(アイトラッキング)や音声対話により、スマートフォンの画面を見ることなく、視線の先にシームレスにリアルタイム翻訳やスケジュール情報を重ねて表示(空間計算)する体験を提供し、会場を沸かせました。
結論:具身知能とAIエージェントの統合がもたらす未来
WAIC 2025の発表が示唆するのは、AIはすでにテキストや画像の生成といった「仮想世界」での作業段階を終え、ロボットの物理的な肉体や軽量ウェアラブルデバイスを通じて「物理世界」へと急速に染み出し始めているということです。
世界モデルの標準化やオープンソース化が進むことで、人型ロボットやAIグラスの一般家庭への普及時期は、我々の予想より遥かに早まるかもしれません。
Source: 36Kr
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