
世界の航空業界において、二酸化炭素(CO2)排出削減に向けた現実的な解決策として「持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)」への注目が急激に高まっている。
このような背景のもと、独自のフィッシャー・トロプシュ(FT)合成技術を強みとする中国のクリーンテック系スタートアップ**「緑炭合成能源(Green Carbon Synthetic Energy)」**が、プレシリーズAラウンドで約1億元(約20億円相当)の資金調達を完了した。同社の画期的な技術的アプローチと、今後の量産化に向けた事業展開について解説する。
独自開発のFT合成技術で、従来のSAF生産の限界を突破
持続可能な航空燃料(SAF)の製造方法には、廃食油(てんぷら油など)を主原料とする「HEFA(水素化処理エステル・脂肪酸)方式」や、バイオエタノールなどから合成する「ATJ(アルコール・トゥ・ジェット)方式」など、複数の製造ルートが存在する。
しかし、HEFA方式は世界的な原料不足やコスト高、ATJ方式は製造工程の複雑さといった個別の課題を抱えている。
これに対し、緑炭合成能源が採用する**「フィッシャー・トロプシュ(FT)合成方式」**は、農林業廃棄物(木くずや稲わら等)をガス化して得られる合成ガスから液体燃料を合成する技術だ。原料がほぼ無限に存在し、低コストで調達できるため、将来の大量供給に向けた最も有力なルートの一つと目されている。
これまでFT合成方式は、複雑な副生成物の発生による精製効率の低さや、高価な触媒の劣化スピードが課題となっていた。しかし同社は、独自開発した高活性触媒と反応プロセスの最適化に成功。競合他社の1.5倍から2倍にのぼる極めて高いSAF生産効率を達成した。これにより、SAFのグローバル普及における最大のハードルである「安定供給」と「価格競争力」の双方をクリアする技術的基盤を構築した。
需要急増のグローバル市場を見据え、内モンゴルで初の自社工場が稼働へ
国際民間航空機関(ICAO)や各国の規制により、国際線におけるSAFの混合比率義務化が段階的に始まっている。需要が天文学的に急増する一方で、現在のSAF世界供給能力は需要の1%未満にとどまっているのが実態だ。
この歴史的な需給ギャップをチャンスと捉える緑炭合成能源は、内モンゴル自治区に同社初となる量産実証工場の建設を進めている。
バイオマス資源(農林廃棄物)の宝庫である同地域に建設されるこのプラントは、今年末にも本格稼働を開始し、年間数千トン規模のSAF生産能力を確保する予定だ。
この量産ラインの実証は、同社が市場のコアサプライヤーへと飛躍するための重要なステップであり、将来的には「万トン級」の商用大型プラントの建設に加え、世界中のエネルギー企業向けに自社開発したコア技術や触媒のライセンス供与を行うフランチャイズモデルの展開も視野に入れている。
Source: 36Kr
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