
中国のライブコマース市場において、前代未聞の取引が成立した。アリババ傘下のECプラットフォーム「タオバオ(淘宝網)」のライブ配信において、本物の宇宙ロケットの打ち上げサービスが販売され、日本円で約6億円(4,000万人民元)で落札されたのである。
ライブコマースの女王「薇娅(Viya)」による規格外の実演販売
この規格外の販売を実施したのは、当時「ライブコマースの女王」と称された中国トップクラスのインフルエンサー(KOL)である**薇娅(Viya/ウィー・ヤー)**氏だ。彼女は1日の配信で数百億円を売り上げるカリスマであり、コスメや食品からマンション、そしてついにはロケットまでをも実演販売の対象にした。
ライブ配信には、中国中央政府系の宇宙開発企業である中国航天科工集団(CASIC)傘下の商業ロケット企業「航天科工火箭技術(ExPace)」の技術担当者もゲスト出演し、視聴者に向けてロケットの構造や安全性、打ち上げプロセスを専門的に解説した。
販売された商品は、小型の固体燃料ロケット「快舟1号甲(Kuaizhou-1A)」の打ち上げサービスおよびロケット本体への広告掲載権である。
開始5分で落札:購入したのは商業衛星スタートアップ
ロケットの定価は約4,500万元(約6億8,000万円相当)だったが、ライブコマース用の特別価格として500万元(約7,500万円相当)の割引が適用され、4,000万元で出品された。
配信開始後、まず手付金として50万元(約750万円相当)を支払う権利枠が売り出され、わずか5分間で800人以上が購入ボタンをクリックした。最終的に打ち上げ権利を落札したのは、中国初の商業リモートセンシング衛星「吉林1号」の開発で知られる吉林省の宇宙ベンチャー「長光衛星技術(Chang Guang Satellite Technology)」だった。
単なる小売りに留まらないデジタルマーケティングの破壊力
中国のライブコマースは、アパレルや化粧品、食品といった日用品を売るチャネルとして爆発的に普及した。2019年の「独身の日(ダブル11)」セールでは、タオバオライブ(淘宝直播)経由だけで約3,000億円の売上を記録している。
今回のロケット販売は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大による対面ビジネスの停滞期に、商業宇宙開発企業が「新しい販路開拓」としてライブ配信を活用した非常にユニークな事例だ。
この出来事は、ライブコマースが単なる個人の消費行動の場に留まらず、大企業間のエンタープライズ取引(B2B)や、高度な最先端テクノロジーのPRプラットフォームとしても機能し得る強大な発信力を持っていることを証明した。日本市場においても、インフルエンサーを通じた物販は増えているが、中国のようなインフラレベルでのライブコマースの統合と高額商品の取引は、デジタルマーケティングの究極の進化形を示している。
情報源:淘宝直播, 新浪科技
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