新型コロナウイルスの第1波という未曾有の危機を経て、中国社会は緩やかな経済活動の再開(ポストコロナ期)へと移行しつつある。この激動の体験は、最前線で戦った医療従事者から、長期にわたる自宅隔離(ロックダウン)を強いられた一般市民にいたるまで、人々の「生活の本質的ニーズ」を改めて見つめ直す契機となった。それに伴い、個人の消費に対する意識や実際の行動パターンにも、静かだが確実な地殻変動が起きている。
2020年4月21日、衣料品大手の「ユニクロ(UNIQLO)」は、中国大手の金融経済メディア「第一財経(Yicai)」、および「復旦大学管理学院政策決定・行動科学研究センター」と共同で、「2020年健康生活力報告(2020 Healthy Living Power Report)」を発表した。この調査は中国全土から5,983件の有効回答を集め、パンデミック前後における消費者の心理変化を多角的に分析したものである。
同報告書から浮き彫りになった、ポストコロナにおける中国消費者の4つの大きなマインドシフトを読み解く。
1. 「いつでもどこでも体を動かしたい」アクティブウェア需要の急増
都市部(一線都市および新一線都市)のビジネスパーソンのうち、70%以上が慢性的な長時間労働に追われており、彼らの間で「日常生活のスキマ時間を見つけて効率的に体を鍛えたい」という健康欲求が急上昇している。
特に一線・新一線都市に住む35歳〜45歳の女性の75%が、「日常の仕事着としても使え、そのまま軽い運動もできるような快適な機能性ウェア(アクティブウェア)の購入を増やす」と答えた。プレッシャーの強い過酷なワークスタイルと体調維持のバランスを取り、「病気ではないが体がだるい」といった未病(亜健康)状態を根本から改善したいという切実なニーズが背景にある。
2. 「リアルな繋がりと温もり」実店舗サービスへの回帰
長期間のデジタル完結生活の反動として、オフラインでの「人間味のあるふれあい」やコミュニティへの帰属感を求める傾向が強まっている。
調査によると、地方都市(三線・四線都市以下)の18歳〜29歳の若年層男性の81%が、「規制が解除されたら、家族や友人とオフラインで集まる頻度を増やしたい」と回答した。同時に、「実店舗に足を運び、スタッフによる親切で詳しい説明や、質の高い対面サービスを受けながら買い物をしたい」という意向が強く示された。
また、一線・新一線都市の19歳〜29歳の高学歴・専門職層(教育やコンサルティング業等に従事)の60%が、アート、ファッション、カルチャーなどの体験型ソーシャルイベントへの参加意欲を示しており、消費行動においても「信頼できる他者や専門家が推奨する商品(クチコミやインフルエンサー推奨)」を重視する傾向が顕著になっている。
3. 短期的な満足から「長期的な安心・安全と高品質」の追求へ
感染症という生命の危機に直面したことで、刹那的な消費や衝動買いから、自己への投資や長期的なウェルビーイング(心身の健康)を重視する方向へシフトしている。
都市部に住む独身女性の多くが、「感染症をきっかけに、以前よりも健康維持や衛生・セルフケア用品に予算を割くようになった。信頼できる高品質なケア製品を買うことで、精神的な安心感と安全性を担保したい」と答えている。また、地方都市の若い世代(19歳〜29歳)の80%以上が、「社会全体の健康問題に関心を持ち、快適で活力あるライフスタイルを追求したい」と回答。若年層の間でも、安さよりも製品の耐久性や素材の安全性といった「長期的な価値」を見極める消費姿勢が浸透しつつある。
4. 「持続可能な暮らし」社会的責任ブランドやローカルブランドへの支持
環境問題や持続可能性(サステナビリティ)に対する関心の高まりも、消費行動に直接影響を与え始めている。
北京・上海・広州・深圳などの大都市に住む19歳〜24歳の女性の60.3%が、「これからはグルメ、自然、芸術、衣服など、人生を豊かにする美しい体験により多くの時間とお金を使いたい」と答えた。また、一線都市で強いストレスにさらされる同年代の男性の72%以上が、「自分の価値観やオリジナリティを表現できるクリエイティブな衣服」を通じて、未来への楽観的な自信を取り戻したいとしている。
特筆すべき変化として、新一線都市の若い女性の60%が、「サステナビリティへの取り組みを重視し、社会的責任を果たしているブランドを優先的に購入する」と答えた。同時に、感染症での地域コミュニティの連帯を背景に、文化的な共感が持てる「国産ローカルブランド(国潮)」や、地理的に近いアジア発のブランド(日本や韓国など)への親近感・好感度が急速に高まっている。
ポストコロナの中国消費市場は、単なる購買力の回復(リベンジ消費)にとどまらず、「健康」「本質的な品質」「コミュニティ」「社会的責任」という持続可能な価値観を核とした、大いなる成熟のステージへと歩みを進めている。
出所:第一財経、中新経緯
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