中国テック番犬

全般検索

    Fintech Web3

    コロナ禍で実用化が加速する「デジタル人民元」の背景と展望

    新型コロナのパンデミック期に開発が加速した、中国の法定デジタル通貨「デジタル人民元(DCEP)」。非接触決済への需要急増と、アリペイ・WeChat Payの民間2強が独占する決済インフラへの国家としての戦略的意図、その仕組みや将来の展望について解説します。

    コロナ禍で実用化が加速する「デジタル人民元」の背景と展望
    中国人民銀行が導入を進める中央銀行デジタル通貨デジタル人民元
    非接触・オフライン対応の決済インフラを目指す中央銀行デジタル通貨(DCEP)

    中国における法定デジタル通貨「デジタル人民元(DCEP:Digital Currency Electronic Payment)」の発行に向けた準備が、2020年初頭の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を背景に急ピッチで進められている。

    中国の中央銀行である中国人民銀行は2020年1月10日、前年のフィンテック分野の取り組みを振り返るレビュー「盤点央行的2019 金融科技」を公式SNSアカウントで発表し、デジタル人民元の全体設計や規格の標準化、複数機関による実証実験が基本的に完了したことを公表した。

    新型コロナウイルス(COVID-19)がもたらした非接触ニーズ

    元中国銀行(Bank of China)行長で、現在は中国インターネット金融協会ブロックチェーン研究ワーキンググループ長を務める李礼輝(Li Lihui)氏はインタビューにおいて、新型コロナの感染拡大がデジタル人民元の発行計画を強力に後押しする可能性があると指摘した。

    パンデミックの初期段階において、中国政府はウイルスが物理的な紙幣や硬貨を媒介して拡散することを防ぐため、回収した旧紙幣を隔離・消毒する措置をとる一方、約6,000億元(当時の為替レートで約9.6兆円相当)の新札を市場に投入した。特に感染の震源地となった武漢市には、春節前に40億元(約640億円相当)の新札が優先供給された。

    しかし、都市封鎖(ロックダウン)や移動制限措置により、対面での現金取引そのものが物理的に困難となった。この極限状態において、「接触を伴わないデジタル決済」への移行は公衆衛生上の要請となり、これが中央銀行デジタル通貨(CBDC)開発のインセンティブをさらに高める要因となった。

    既存の決済インフラ(Alipay・WeChat Pay)との違いと戦略的意義

    李礼輝氏は、デジタル人民元の普及について、既存の巨大決済エコシステムとの競争と共存が鍵になると述べている。

    当時、中国の小売決済市場はアリババ傘下の「Alipay(支付宝)」とテンセント傘下の「WeChat Pay(微信支付)」によって事実上独占されていた。

    デジタル人民元は、民間決済アプリとは本質的に異なるいくつかの戦略的特徴を備えている。

    1. 法定通貨としての強制通用力:民間アプリは加盟店が導入しなければ使えないが、デジタル人民元は国の法定通貨であるため、あらゆる店舗での受け入れが法的に義務付けられる。
    2. 銀行口座が不要:銀行口座を持っていなくても、専用のウォレットアプリをスマホに入れるだけで使用可能となり、金融包摂をさらに推し進める。
    3. 「ダブル・オフライン」決済(双離線):インターネット回線やモバイル通信が繋がらない地下や山間部、災害時の環境であっても、スマートフォン同士をかざすだけで(NFC技術を用いて)決済が可能。これは通信障害に弱いQRコード決済への大きな優位性となる。

    民間決済企業への過度な依存による金融システムリスクを抑えつつ、国家主導の通貨インフラをどのように確立していくか、その進展は世界のCBDC開発競争のベンチマークとしても注視されている。

    情報源:China Daily, 人民網

    コメント

    ...
    コメントを読み込んでいます...

    コメントを投稿する

    ※ メールアドレスは公開されません。