
田園生活と伝統文化を美しい映像で発信する李子柒(リー・ズーチー)という女性クリエイターが、YouTube上で約800万人のフォロワーを持ち、100本以上の動画がそれぞれ500万回以上再生されるほどの人気を博している。この現象が改めて注目を集めさせたのが、中国独自の「インフルエンサー経済(KOL経済)」だ。
インフルエンサー経済とは何か
インフルエンサー経済とは、ネット上で大きな影響力を持つ人物(KOL:Key Opinion Leader)がソーシャルメディアでファンを集め、その注目度を購買行動へと転換するビジネスモデルを指す。
日本でもインフルエンサーマーケティングは普及しているが、中国ではライブコマース(ライブ配信と購入機能の統合)が桁違いのスケールで発展している点が特徴的だ。また、中国ではMCN(マルチチャンネルネットワーク)と呼ばれるインフルエンサー育成・マネジメント企業が高度に組織化されており、コンテンツ制作からサプライチェーン開拓、EC店舗運営までを一気通貫でサポートする体制が整っている。
衣類の天然染め・酒の醸造・伝統的な製紙・口紅の製造——こうした生活文化コンテンツを発信するKOLが続々と経済的成果を上げ、社会的認知度も急上昇している。
ライブコマースが「ダブル11」を席巻
2019年の「ダブル11」(11月11日の「独身の日」ネット通販イベント。日本のブラックフライデーに相当する中国最大のオンライン商戦)では、インフルエンサーによるライブコマースが爆発的に台頭した。
天猫(Tmall)に参加した企業の中には売上の50%以上をライブコマース経由で達成したケースもあり、ライブコマースによる期間中の成約総額は200億元(当時のレートで約3200億円)近くに達した。スマートフォン一台で、視聴者との双方向コミュニケーションを取りながらリアルタイムで実演販売を行うライブコマースは、従来のECに代わる新たな標準となりつつある。
3つの主な収益モデル
インフルエンサー経済の収益源は現在、主に以下の3つに整理される。
- ライブ配信プラットフォームでのギフティング(投げ銭):配信中にファンが仮想ギフトを購入して贈るシステム。
- ソーシャルメディアでのブランド商品プロモーション:化粧品・ファッションから自動車・金融商品まで、KOLを活用する広告主の業種が拡大。
- ECプラットフォームでの直接販売:KOLが自らのECストアや提携ブランドの商品をライブ配信で紹介し、視聴者がアプリ内で即時購入する。
「95後」世代が消費の主役に
百度(Baidu)の調査報告によると、中国の1995〜1999年生まれ(いわゆる「Z世代初期」)の人口は約1億人。幼少期からスマートフォンとソーシャルメディアとともに育った彼らは、大量の情報を発信・消費することを日常とする。アクセンチュアの調査では、中国のZ世代消費者の70%以上がソーシャルメディアを通じた直接購入を好むと回答している。
中国のSNS「微博(Weibo)」のCEOは「成功したKOLは大衆向けのコンテンツを作っていない。まず製品のポジショニングをじっくり考え、ターゲットオーディエンスに正確に狙いを定め、そのセグメントに刺さるコンテンツでファンを育て、商品を打ち出す」と分析する。
インフルエンサー経済は伝統的な広告・小売に破壊的な変化をもたらしている一方で、誇大広告や商品品質問題といった課題も表面化している。健全な成長には市場の監督管理やプラットフォーム側の健全化が不可欠だと指摘する声も多い。
情報源:人民日報
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