
米国株式市場に上場する中国のテクノロジー巨人アリババグループ(阿里巴巴集団)が発表した2019年3月期第3四半期(2018年10〜12月期)決算は、中国のインターネット業界にとって歴史的な節目となりました。
売上高は前年同期比41%増の**1,172億7,800万元(約1.9兆円/当時レート 1元≒16.2円換算)に達し、中国のネット企業として初めて「単一四半期で売上高1,000億元」**の壁を突破しました。この圧倒的な成長を牽引した主要セグメントの動向と、同社の多角化戦略を振り返ります。
圧倒的なアクティブユーザー数とEC事業の底力
アリババの主力事業である国内EC(淘宝・天猫など)は、他の新興EC(拼多多など)の猛追を受けながらも、強力なユーザーエンゲージメントを維持しました。
- 月間アクティブユーザー(MAU):ショッピングアプリ「淘宝(タオバオ)」のMAUは6億9,900万人に達し、前四半期(2018年9月末)からわずか3ヶ月で3,300万人増加しました。
- 年間アクティブ消費者数:6億3,600万人を記録し、前年同期比で3,500万人の増加となりました。
- コアコマース売上高:前年同期比40%増の1,028億4,300万元となり、グループ全体の売上高の約88%を占める絶対的な収益基盤として機能しました。
「ダブルイレブン(独身の日)」が過去最高を更新
この四半期には、アリババ最大のネット通販イベントである「ダブルイレブン(双十一)」が含まれていました。10周年を迎えた2018年のイベントでは、1日の流通総額(GMV)が**2,135億元(約3.4兆円)**を記録し、過去最高を更新しました。
また、物流ネットワーク子会社である**「菜鳥網絡(ツァイニャオ・ネットワーク)」**の処理した配達指示書数は10億件を突破し、サプライチェーンのデジタル化と処理能力の進化を証明しました。菜鳥は自社で配達員を雇うのではなく、物流情報を統合する「デジタル管制塔」として機能するオープンなプラットフォームであり、この配送コントロール力が強みとなっています。
クラウド事業(Alibaba Cloud)が成長の第2エンジンへ
アリババの次の成長ドライバーとして急速に存在感を高めているのが、クラウドコンピューティング部門の**「Alibaba Cloud(アリクラウド/阿里雲)」**です。
2018年通期(1〜12月)のアリクラウドの売上高は**213億6,000万元(約3,460億円)**を記録し、初めて200億元の大台を突破しました。わずか4年間で売上規模を約20倍に成長させており、米国のAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureに追随する「アジア最大のクラウドプロバイダー」としての地位を揺るぎないものにしました。
日本市場においても、アリババはソフトバンクとの合弁会社「SBクラウド」を通じて早くからデータセンターを開設し、国内企業向けに低価格かつ高機能なクラウドインフラやAI画像認識ソリューションを提供して地盤を固めていました。
ダニエル・チャン(張勇)CEOが示す「企業のデジタル変革(DX)」
この時期は、創業者のジャック・マー(馬雲)氏からダニエル・チャン(張勇)氏へ実質的な経営権の委譲が進められていた移行期でもありました。
ダニエル・チャンCEOは決算発表に際し、次のようにコメントしています。
「アリババの力強い成長は、単なるeコマースの枠を超えた、クラウドコンピューティングやビッグデータといった基盤技術の進化によって支えられている。我々は、あらゆる小売業や産業界のデジタル化を推進する『アリババ・オペレーティングシステム』を提供していく」
アリババは、リアルスーパーである「盒馬鮮生(フーマフレッシュ)」に代表される「ニューリテール(新小売)」戦略を強力に進めており、オンラインのトラフィックとオフラインの実店舗、そしてそれを支える物流とクラウドインフラを融合させるビジネスモデルの構築で他社を圧倒していました。
まとめと歴史的背景
2018年末におけるアリババの四半期売上1,000億元突破は、まさに同社の絶頂期を象徴する出来事でした。
しかしこの数年後、中国政府によるプラットフォーマーへの規制強化(2020年末のアント・グループIPO急遽停止や独占禁止法違反による巨額の罰金)や、バイトダンス(TikTok運営)などのByteDanceエコシステム、さらには拼多多(Temu)といった新興勢力のさらなる激しい競争により、アリババは巨大な組織を6つの事業体へ分割するなどの歴史的な経営再編を余儀なくされます。
この1,000億元突破の記録は、デジタル技術が中国の巨大市場を極限まで効率化した結果として、今なおテック業界の歴史に深く刻まれています。
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