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    ラッキンコーヒー創業1年で2000店、スタバを脅かす急成長の裏

    中国のアプリ特化型コーヒーチェーン「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」が、創業わずか1年で2,000店舗を達成した2018年末当時の記録。巨額の赤字を垂れ流しながら補助金とモバイルオーダーで店舗網を急拡大させたビジネスモデルと、その後の不正会計・上場廃止、そして劇的な復活の歴史を解説します。

    ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)の店舗と専用アプリ
    ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)の店舗と専用アプリ
    アプリ専用注文スタイルで急成長した「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」

    中国発のアプリ特化型コーヒーチェーン**「ラッキンコーヒー(Luckin Coffee/瑞幸珈琲)」**が驚異的なスピードで中国市場を席巻しました。

    2018年12月25日、同社は年間目標として掲げていた「2,000店舗」を期限前に前倒しで達成したと発表。この急拡大は、長年中国のコーヒー市場で独占的地位を築いてきたスターバックス(星巴克)の脅威となりました。

    創業わずか1年のスタートアップが仕掛けた「コーヒー業界のDX」と、巨額の赤字を辞さない成長戦略、そしてその後の歴史的な大転換について解説します。


    スターバックスが20年かけた規模に、わずか1年で到達

    ラッキンコーヒーは、配車サービス最大手「神州優車(UCAR)」の元COOである銭治亜(ジェニー・銭)氏らが2017年10月に設立し、2018年1月に正式開業した新興コーヒーブランドです。

    同社の最大の特徴は、**「店舗のデジタル化」と「モバイルオーダーへの特化」**にあります。

    • キャッシュレス&レジなし:すべての注文と決済は専用のスマートフォンアプリ、またはWeChat(微信)のミニアプリ経由で行われます。店舗には現金を扱うレジはおろか、注文を受けるスタッフのカウンターすら基本的には存在しません。
    • 快取店(ピックアップ専門店)中心:スターバックスのようにゆったりとした空間を提供する「サードプレイス」型ではなく、座席がほとんどない数坪程度の極小店舗をオフィスビルや大学構内に大量出店。注文後にすぐ受け取れる、あるいはデリバリー(配達)で届けるモデルに特化しました。

    スターバックスが1999年の中国1号店オープンから20年かけて約3,600店舗に達したのに対し、ラッキンコーヒーはわずか1年でその6割に相当する2,000店舗を直営で展開し、中国市場第2位のチェーンへと躍進しました。


    巨額の赤字を許容する「成長優先」のVCモデル

    この超高速出店を支えたのは、ベンチャーキャピタルから調達した巨額の資金と、赤字を恐れない補助金マーケティングです。

    同社が投資家に提示した事業計画書によると、2018年1月〜9月期の累計売上高が**3億7,500万元(約60億円/当時レート)であったのに対し、純損失は8億5,700万元(約137億円)**に上りました。売上を大幅に上回る大赤字であり、粗利益率はマイナス115.5%という異常な水準でした。

    それでも同社は以下のように主張し、攻勢の手を緩めませんでした。

    「価格補助(新規登録で1杯無料、2杯買ったら1杯無料など)によって顧客を急速に獲得し、市場シェアを最優先で確立することは当初からの既定路線。現在の損失は想定の範囲内であり、今後も投資を拡大する」

    この「補助金で顧客を囲い込み、競合を排除した後に収益化する」手法は、中国の配車アプリ(DiDiなど)やシェアサイクル(Mobikeなど)が辿ったプラットフォーム戦略そのものでした。


    【背景解説】その後の不正会計スキャンダルと、驚異的な「奇跡の復活」

    日本のビジネスパーソンにとって、ラッキンコーヒーといえば「不正会計によるナスダック上場廃止」のイメージが強いかもしれません。実際、同社は上場後の2020年、約3億1,000万ドル(約330億円)の売上高を架空計上していたことが発覚し、社会的信用を完全に失って経営危機に陥りました。

    しかし、同社の物語はここでは終わりません。その後に起きた「奇跡の復活」は、現代中国の消費トレンドを象徴する出来事となっています。

    1. 新経営陣によるオペレーションの合理化 創業者らを排除した新経営陣は、非効率な店舗の閉鎖、無駄な補助金(全額無料クーポンなど)の廃止を行い、顧客のライフタイムバリュー(LTV)を重視する持続可能なモデルへと転換しました。
    2. メガヒット商品「生椰拿鉄(ココナッツラテ)」の開発 2021年、中国の若者層の好みに合わせたココナッツミルク使用のラテ「生椰拿鉄(生ココナッツラテ)」を発売。これが累計数億杯を売り上げる国民的ヒット商品となり、ブランドイメージを「安物のコーヒー」から「トレンドを作るドリンクブランド」へと刷新しました。
    3. 中国市場でスターバックスを凌駕 フランチャイズモデルの導入も手伝い、2023年には中国国内の店舗数が1万6,000店舗を突破。売上高および店舗数の両面で、中国におけるスターバックスを完全に追い抜くまでに急成長を遂げました。

    まとめ

    2018年末に年間2,000店舗を達成した時点でのラッキンコーヒーは、一見すると「バブル的な赤字スタートアップ」に過ぎませんでした。しかし、同社が構築した「モバイルオーダー完結型の省スペース・低コスト店舗」というインフラ自体は、極めて強固で合理的なものでした。

    一度は不正会計で破滅の淵に立たされながらも、独自の製品開発力と圧倒的な店舗網を武器に蘇ったラッキンコーヒーの軌跡は、デジタルとリアルを融合させた現代小売業(ニューリテール)の最もダイナミックな成功事例と言えるでしょう。

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