スターバックスは2018年8月、アリババ傘下のフードデリバリー大手「Ele.me(ウーラマ/餓了麼)」との戦略的提携を発表し、中国で急速に拡大するフードデリバリー市場に本格参入しました。2018年末までに中国国内の30都市、2,000店舗以上への導入を目指します。
シアトルに本拠を置くコーヒー巨頭であるスターバックスがこの決断を下した背景には、中国国内で急成長する新興競合との激しい市場競争があります。競合他社は大幅な割引キャンペーンや、スマートフォンの利便性をフルに活かしたビジネスモデルで消費者を囲い込んでいます。
30分以内の配送と「ゴーストキッチン」の展開
両社の共同発表によると、まずは同年9月に北京と上海の150店舗でデリバリーサービスを開始し、注文から30分以内での配送体制を構築します。
さらに、スターバックスはアリババ傘下のスマートスーパー「フーマー(盒馬鮮生/Hema)」の店舗内に、デリバリー専用の「スターバックス・デリバリーキッチン」を設置。これにより、既存の実店舗網に頼ることなく、デリバリー注文の効率的な処理とサービスエリアの拡大を一気に実現します。
これまでのスターバックスは、サードパーティを通じた配送がブランドのプレミアムイメージを損なう懸念や、デリバリーを利用せずとも実店舗が十分な売上を上げていたことから、デリバリー事業への参入には慎重な姿勢を崩していませんでした。しかし、市場環境の激変がその方針転換を迫ることになりました。
急台頭する「ラッキンコーヒー」の脅威
スターバックスを突き動かした最大の要因は、創業わずか7ヶ月の現地スタートアップ「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲/Luckin Coffee)」の驚異的な急成長です。
北京を拠点とするラッキンコーヒーは、以下のような戦略でスターバックスのシェアを脅かしています。
- 価格優位性: コーヒー1杯の平均価格(約30元=約600円)がスターバックスより約15%安価。
- アプリ特化型UI: モバイルアプリで注文から決済までを事前に行い、最寄り店舗で待たずにピックアップできる体験を提供。
- フード類の強化: サプライヤーはスターバックスと同じ高品質な企業を採用しつつ、ケーキやマフィンなどの軽食をスターバックスより30%以上安く提供。
ラッキンコーヒーは2018年7月末時点で13都市に809店舗を構え、同年内に2,000店舗まで拡大する計画を表明しています。スターバックスは中国国内に約3,400店舗を保有し、2022年までに倍増させる目標を掲げていますが、デリバリー対応を急ぐ必要性に迫られたのは明らかです。
日中デリバリー市場のコンテキスト対比
中国におけるデリバリー市場のデジタル連携は、単なる「配送代行」に留まりません。アリババ経済圏(会員システムや決済アプリのAlipay等)との深いシステム連携や、フーマーのような新小売(ニューリテール)店舗との物流統合を伴う点が特徴です。日本の一般的なデリバリーサービス(Uber Eatsや出前館など)が提供する配送サービスと比較して、より高度でシームレスな顧客データ統合が進んでいる点が大きな違いと言えます。
情報源:Caixin
コメント
...