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    拼多多のナスダック上場、アリババを超える高評価の背景と戦略

    2018年7月に米国上場し、時価総額約324億ドルに達した中国のソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」。のちにグローバルEC「Temu」を展開する同社が、WeChatのネットワークを活用した共同購入モデルで地方・農村市場を開拓し、アリババを超える株価売上高倍率を記録した背景を分析します。

    拼多多(Pinduoduo)のアプリ画面と急成長
    拼多多(Pinduoduo)のアプリ画面と急成長
    ソーシャル連携で急成長した中国のECプラットフォーム「拼多多」

    2018年7月26日(米国時間)、中国のソーシャルEC企業である**「拼多多(Pinduoduo、ピンドゥオドゥオ)」**がナスダック(NASDAQ)に上場しました。

    取引初日の株価は公開価格から36%も急騰し、創業わずか3年ほどのスタートアップながら、時価総額は約324億ドル(約3.6兆円)に達しました。

    のちに日本を含むグローバル市場で爆発的な人気を博す激安ECプラットフォーム**「Temu(テム)」**の母体である同社が、当時いかにして中国のEC巨人であるアリババ(阿里巴巴)の牙城を崩したのか、その成長戦略と株式市場での超高評価の背景を紐解きます。


    WeChatをフックにした「共同購入(ソーシャルEC)」モデル

    元Googleの技術者であるコリン・ファン(黄崢)氏が2015年に設立した拼多多は、テンセント(腾讯)が運営する中国最大のSNSアプリ「WeChat(微信)」のネットワークと深く結びついた、独自の**「共同購入(拼団)」モデル**で急速に成長しました。

    ユーザーがWeChatのグループチャットやモーメンツ(タイムライン)で友人を誘い、一緒に同一商品をまとめて購入することで、市場価格より大幅な割引を受けられる仕組みです。

    特徴アリババ(淘宝・天猫)など拼多多(Pinduoduo)
    ユーザー行動検索して目的の商品を見つけるSNSで友達とシェアして安く買う
    主要トラフィック源自社アプリ内の広告・検索WeChatのソーシャル連携
    決済・アクセス独自のAlipay決済が中心WeChat PayおよびWeChatミニプログラム

    テンセントは拼多多の筆頭株主として、WeChat内でのシームレスなトラフィックのやり取りを黙認・支援しました。これにより、拼多多は莫大な新規ユーザー獲得コスト(CAC)を極めて低く抑えることに成功したのです。

    2018年第2四半期時点で、拼多多のアクティブユーザー数は約3億4,360万人に達し、アリババとJD.com(京東)による寡占状態だった中国EC市場に激震走る急追を見せました。


    アリババやFacebookを超える「株価売上高倍率(P/S)」の背景

    上場当時、拼多多は積極的な顧客獲得キャンペーンによる大赤字の状態にありました。売上高は約4億ドル強だったものの、株価売上高倍率(P/S)は一時116.5倍を記録しました。

    これは当時のアリババ(27.4倍)、Facebook(31倍)、Amazon(19.1倍)を大きく上回る極めて高い評価倍率です。赤字のスタートアップにこれほどの期待が集まった理由は、中国の「低線都市(地方都市・農村部)」における圧倒的なポテンシャルにあります。

    アリババが手薄にした「地方・農村市場」のブルーオーシャン

    モーニングスターのアナリストであるジェニファー・ソング氏は、「アリババやJD.comは一線・二線都市(北京・上海・深センなどの大都市)の富裕層やホワイトカラーを重視するあまり、所得水準の低い地方都市や農村部のユーザー層の開拓を後回しにしていた」と分析しています。

    中国の都市ランク(都市の経済規模に基づく分類)において、拼多多のユーザーの約60%は三線都市以下の地方・農村部に在住しています。これらの地域は、大都市に比べて可処分所得は低いものの、スマートフォンの急速な普及により「初めてネットショッピングを体験する」ユーザーが爆発的に増加していました。

    拼多多の目論見書でも「地方都市における消費支出の伸び率は、大都市を大きく上回っている」と強調されており、この巨大な新市場でトップシェアを確保したことが、投資家からの将来性の期待に直結しました。


    競合各社の対抗策と拼多多の課題

    拼多多の台頭を無視できなくなった競合各社も、地方市場への攻勢を強めました。

    • アリババ:農村特化のEC・物流プラットフォーム「匯通達(Huitongda)」に約7億1,600万ドルを出資。また、タオバオ特売版(のちの淘宝特価版)を投入。
    • JD.com:地方での物流網構築を進め、コンビニ型のリアル店舗を地方都市に多数出店する計画を発表。

    急成長の一方で、当時の拼多多には以下の大きな課題がのしかかっていました。

    1. 品質管理と偽物対策 低価格を追求するあまり、「安かろう悪かろう」の粗悪品やコピー商品が横行しているとの批判を強く受けていました。上場後、同社はブランド価値向上のため、知的財産権の保護とプラットフォームの健全化に向けた大規模なパトロールと出品制限の実施を余儀なくされます。
    2. 収益モデルの確立 当時は加盟店向けの広告収入が主であり、手数料モデルの構築や、購入単価(ARPU)の向上が最大のテーマでした。

    まとめと現在の「Temu」へのつながり

    2018年当時に「農村から都市を包囲する」独自の戦略で中国ECのゲームルールを変えた拼多多は、その後、高品質なブランド品を取り扱う「百億補助金(100億元規模の割引キャンペーン)」などで都市部ユーザーの獲得にも成功。

    そして現在、中国国内で培ったサプライチェーンの力と超低価格モデルのノウハウを武器に、**「Temu」**というブランドで世界中に進出しています。

    かつて「一過性のブーム」と評されたこともある拼多多のビジネスモデルは、今やグローバルなEC構造を揺るがす強力なプラットフォームへと進化を遂げたのです。

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