中国ではスマートフォン(スマホ)を使った電子決済サービスが急速に普及し、アリババグループが運営する「Alipay(支付宝)」のユーザー数は4億人、テンセントの「WeChat Pay(微信支付)」は7億人を突破した。現在、スマホ決済は中国の消費者にとって不可欠な「生活インフラ」として完全に定着している。
現地の調査データによると、2016年第2四半期(4-6月)の中国のスマホ決済利用額は前年同期比17%増の22兆元(約370兆円)に達した。コンビニエンスストアでの買い物や水道光熱費などの公共料金の支払いだけでなく、個人間での手軽な送金や、街頭の屋台における支払いなど、あらゆる日常のシーンに深く浸透している。
利用方法は極めてシンプルである。消費者はスマホの画面に表示したQRコード(またはバーコード)を店舗のレジやリーダーで読み取ってもらうだけで、瞬時に支払いが完了する。セキュリティ面への懸念について現地の消費者に尋ねると、多くは「現金を財布に入れて持ち歩き、紛失や盗難に遭う物理的リスクに比べれば、スマホ決済の方がはるかに安全だ」と回答する。
1元単位(数十円規模)のマイクロペイメント(少額決済)を可能にするこの決済システムは、中国で新しいビジネスモデルやスタートアップサービスを次々と生み出すイノベーションの「土台(プラットフォーム)」としての役割も担っている。事業者が新たなサービスを開始する際、相手からシームレスかつ確実に利用料金を回収できる環境が整っているためだ。
代表的な例として、シェアサイクル大手の「Mobike(モバイク)」や、中国で急速に拡大したフードデリバリー(外売)サービスなどが挙げられる。これらが爆発的な成長を遂げられたのは、その前提としてスマホ決済が社会全体に普及していたからに他ならない。最近では、傘のシェアリングサービスや、駅や店舗に設置されたモバイルバッテリーの時間貸しサービスなど、決済インフラを前提としたユニークなビジネスが続々と誕生している。
上海に拠点を置く日系ベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・ベンチャーズの中国代表は、「共通のスマホ決済基盤の上に、無数の起業家がアイデアを競い合い、その結果として新サービスが波状的に広がっていくエコシステムが構築されている」と指摘する。
注:本サイトは、先進ソフトウェアやAI/エージェント、半導体、ロボティクスといった先進テクノロジーの動向を専門に追うメディアであり、本稿は中国のフィンテックおよびプラットフォームインフラの進化に関するレポートである。
中国の消費者は現状では、個人情報の収集や行動データの利用に対する消費者の懸念は欧米ほど顕著ではない。しかし、中国発の決済サービスが日本をはじめとする先進国へグローバル展開を図るにあたっては、各国の厳格な個人情報保護法制への適合や、ユーザーのプライバシー保護に関する信頼醸成が今後の大きな課題となるだろう。
情報源:日経新聞
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